Other Parts Discussed in Post: AWRL1432, IWRL1432

著者:Keegan GarciaKishore RamaiahSnehaprabha Narnakaje

これまで 10 年以上にわたり、レーダー ベースのセンサは、車載や産業用アプリケーション向けのセンシング方式の 1 つという位置付けを確立してきました。レーダーは、長距離対応、環境に対する復元性、センシング分解能の向上を必要とする設計の具体化に役立つほか、衝突検出のような ADAS (先進運転支援システム) や、液面検出などにも最適です。

CMOS (相補型金属酸化膜半導体) ベースの SoC (システム オン チップ) レーダー センサの導入により、レーダーの開発が従来よりも容易になり、車載分野でのパーキング アシスト、キック ツー オープン (KTO) 向けセンシング、ドア開閉時の障害物検出、ロボットや電動自転車などのアプリケーションへの応用も進んでいます。

コストと電力に制約がある産業用や車載の各アプリケーションの要件を満たせるように、現在の 77GHz レーダー SoC センサは、根本から新規設計したアーキテクチャを必要としています。TI の AWRL1432IWRL1432 の各 SoC のようなデバイスは、さまざまな電力状態に合わせてデューティ サイクルを迅速に変化させるパワー マネージメント機能を搭載しており、レーダー フロント エンド、デジタル プロセッシング コア、メモリのような複数の内部コンポーネントを、必要なときのみ効果的に動作させることができます。平均消費電力を削減し、標準で 1W を上回っている従来の値から、(チャープ構成にもよりますが) 5mW 未満に抑えることで、ハードウェア設計者は放熱や温度の設計でフレキシビリティを確保できるほか、ヒートシンクの不要化やプリント基板設計の簡素化を通じてコストを削減することもできます。

ソフトウェア定義のレーダーで斬新かつフレキシビリティの高い実装を可能に

自動車メーカーがどのセンシング方式を選択するかは、多くの場合、センサが自動車の中で果たす目的によって決まります。たとえば、キック ツー オープン センサは、自動車が駐車され、施錠されている状況でスタンバイ検出モードになっている必要があります。駐車中に自動車のバッテリから多くの電力が引き出されないように、自動車メーカー各社は従来、静電容量式や超音波など、低消費電力のセンシング方式を選択してきました。ただし、残念なことにこれらのセンサには、誤検出、環境的な信頼性、認識能力などいくつかの課題があります。それに対し、AWRL1432 のような低消費電力 77GHz レーダーは、スタンバイ検出モードの消費電力が 3mW 未満で済みます。しかも、環境条件にかかわりなく認識精度が向上し、よりシンプルな取り付けが可能なため、システム実装の総合コストを削減できます。

低消費電力と高性能のどちらが必要かに応じて動作モードを動的に切り替えるように、レーダー センサを構成することもできます。たとえば図 1 に示すように、KTO センシングを 3mW 未満のスタンバイ検出モードで動作させ、人を検出したときに高性能モードに切り替えて、キックのジェスチャ認識能力と誤検出防止能力を向上させることができます。

 

11 個の AWRL1432 レーダー センサを低消費電力モードと高性能モードの間で動的に切り替えることが可能

ADAS 分野で、従来のパーキング アシスト システムは 8 ~ 12 個の超音波センサに加え、複数のカメラ センサを使用していました。しかし現在は、より信頼性が高く、コスト効率の優れた自動型システムへの進化が進んでいます。各超音波センサにはコスト効率が優れているという長所がありますが、主な短所として、自動車の外観にセンサが及ぼす影響 (超音波を通す穴が必要)、過酷な環境での性能、距離と検出性能の制約 (測定可能な最小距離と最大距離) を挙げることができます。

自動車設計者は、より多くの超音波センサを追加する代わりに、図 2 のようにパーキング アシスト機能用の既存のコーナー レーダー センサを活用し、コスト効率の優れた TI の AWRL1432 統合型レーダー SoC を組み合わせることで、自動車の周囲全体を視野角の範囲に収めることができます。超短距離レーダー センサである AWRL1432 は、アンテナ構成にもよりますが、最小で 3cm、最大で 15m の距離にある静的な物体を検出できます。

 

2:パーキング アシストでレーダー センサを使用して 360 度に対応

図 3 に示すように、自動車のバンパー中央にある同じセンサをパーキング アシストと KTO の両方に活用し、複数のコーナー センサをパーキング アシストと死角検出の両方に活用することができます。このマルチモードの活用を実現するには、レーダー センサはソフトウェア構成が可能であること、および必要に応じて高性能と低消費電力の間でスケーリングできるようにアーキテクチャ レベルでフレキシビリティを確保することが必要です。

 

3:パーキング アシストと KTO の両方を処理する単一のマルチモード レーダー センサ

低消費電力レーダー センサを過酷な産業環境で運用

超音波センサは、車載以外のアプリケーションでも物体や人の近接性センシングのために一般的に使用されてきました。たとえば、駐車場で自動車の存在を検出して上下する車止めや、図 4 に示すような産業用フォークリフト、農業機械、電動自転車といった各種車両の衝突防止機能などです。より高い精度要件が求められる中で、超音波センサから 77GHz レーダー センサへの置き換えが進んでいます。IWRL1432 はより低コストであり、駐車場の車止めセンサの実装コストの削減や小型化に役立ちます。これらのセンサは、無線周波数性能の向上により、1m から 60m 以上までの多様な距離で物体や人を検出する必要がある電動自転車、電動スクーター、農業機械などへの物体検出機能の導入にも最適です。

 

477GHz レーダーがセンシングの課題解決に役立つ、過酷な環境のアプリケーション

図 5 に示したタンク水位センサは、産業用の環境で液面または固体の水準を測定します。蒸気や泡に取り囲まれている、または難易度の高い他の条件下であっても、無線波を送出し、液体または固体 (化学物質、オイル、液体など) の表面からの反射波を正常に検出できます。このアプリケーションの主な要件は、超低消費電力、検出の精度、作業者の安全性です。77GHz の IWRL1432 センサは、ディープ スリープ モードを内蔵しており、1 回の測定あたり 10 mJ 未満の消費電力を達成しているほか、セーフティ インテグリティ レベル 2 をターゲットとし、mm レベルの測定精度を実現します。

 

5:液面測定の目的で産業用タンクの上部に取り付けた 77GHz レーダー センサ

まとめ

車載や産業用の超音波センシングや静電容量式センシングには、設計上の固有の課題がいくつかあります。一方、レーダー センシングの分野でコストと消費電力を最適化したデバイスは、これらの設計上の課題の解決に役立つうえ、自動車の周囲や産業用の環境で新たに登場する各種アプリケーションにも機会の扉を開くことになります。

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