近年、食品スーパーやホテル、ショッピングセンターに数台まとまった形で、公共の電気自動車(EV)充電ステーションが設置されてきています。世界の主要都市に、駐車しながら充電ができるスポットがインフラとしてパッチワークのように存在します。しかし、今後10年でEVを運転する人口が世界中で増加すると、もっともっと多くの充電ステーションが必要になります。

 ある予測では、2030年までには路上を走る1.2億台のEVに対応するために、米国、ヨーロッパ、および中国で充電機器が4千万台、設備投資額にして500億ドルが必要になると予想されています1。米国のみでは、現在は公共および民間のEV充電ステーションは56,000台以下しかありませんが、2030年までには1,300万台必要になる予想です2

 内燃エンジンが支配する時代がもう長くはないとしたら、現在でももっと多くのEVが路上を走っているのを見かけるはずです。しかし、グローバル・マーケットは簡単にはスイッチが入りません。車の充電はもっと便利でなければならず、公共の駐車場に充電ステーションを少しばかり設けるだけでは足りません。また、自動車メーカーは新たな種類の車の生産ラインを作り出す必要があります。

 高電圧電源ソリューションに取り組むTIのマーケティング・マネージャー、Nagarajan Sridharは次のように述べています。「ガソリン自動車はすぐにはなくならないでしょう。EVのドライバーに必要となる充電インフラは、まだまだ増強が必要です。充電インフラ・ソリューションのメーカーと自動車メーカーは、EVの普及に向けて協力して充電インフラ・ソリューションの拡大に取り組まなければなりません。」

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それまでの間、来るべきパラダイムシフトを生き延びようとする自動車メーカーはすでに、車両エンジン設計を徐々に変化させています。EVへの移行は、自動車にとって革��的なことですが、一夜にして起きるわけではありません。しかし、テクノロジーにより段階的に高速レーンを進んでいるのです。

ステージ1:高効率のガソリン・エンジン車の製作
 世界中の政府機関がEVへの移行に向けて準備を進めており、中国を市場とする自動車メーカーは、2025年までに販売台数の少なくとも7%を電気自動車にすることが義務付けられます3。また、ノルウェーでは、ガソリン車の価格に厳しい課税が加えられます4。米国の企業別平均燃費(Corporate Average Fuel Economy)規制では、一般車のガソリン1ガロン当たりの走行距離を延ばし、CO2排出を削減することを自動車メーカーに求めています。

 ハイブリッド、電化、パワートレイン・システムの専門家であるTIのジェネラル・マネージャー、Karl-Heinz Steinmetzは次のように述べています。「電化への移行は、化石燃料の燃焼により放出される二酸化炭素やその他の温室効果ガスなどの排出の削減を求める全体的なニーズにより推し進められています。しかし、エンジンの燃焼効率を上げるだけでは、政府が支持する排出削減目標を一般車が達成するには不十分です。ステップの転換が必要であり、このステップが電化であるのは明らかです。」

 自動車メーカーは、暫定的な対策として、燃焼から動力を得るパワートレインをアップグレードしており、エンジンの効率化や車両の軽量化などの対策により1ガロン当たりの走行距離は向上しています。また、内燃エンジン処理を最適化して燃料消費と排気を削減する、精巧なセンサ、エンジン部品コントローラ、排気処理システムも導入しているところです。



ステージ22つの動力源の橋渡しとなる電気とガソリンのハイブリッド
 完全電化パワートレインのテクノロジーとその他の車両システムが成熟するにつれ、マイルド・ハイブリッド車が出現し、ガソリン消費を抑えるために電力をより多く使用する車を消費者が運転する機会ができました。ベルトドライブ冷却や燃料ポンプやその他の機械的システムは、電力で動くシステムで置き換えられつつあります。

 Karl-Heinzは次のように述べています。「ハイブリッド車市場は成長を続けています。内燃エンジンの効率向上につながるとともに、完全な電動自動車の現在の制約を避けられるからです。ドライバーは、バッテリだけではたどり着けないほど遠くまで行く場合でも、途中で行き詰まることはありません。」

 それほど頻繁に充電しないで長距離を走りたい車オーナーのために、現在の完全電気自動車の走行距離が約335マイル(約540km)なのと比べて、ハイブリッド車では最長で640マイル(約1030km)の距離のドライブが可能です5

「ハイブリッド方式では、一部のシステムのみを電化するので、自動車メーカーにとっては比較的簡単に内燃エンジンを適合させることができます。」とKarl-Heinzは述べています。「内燃エンジン車の製造も続けながら、政府の厳しい排出ルールにも対応可能です。」

ステージ3:イノベーションにより完全電動自動車が標準となる
 走行距離、充電時間、性能に対するドライバーの期待に応えるために、設計者はバンドギャップが広く、EVの高電圧・高効率のニーズに対応する半導体材料である炭化ケイ素を活用し、また革新的な絶縁型ゲート・ドライバを使って電力の監視・管理を行うことで、充電の高速化とバッテリ寿命の延長を目指しています。

 このような進歩により、2022年頃にはEVの消費者需要が飛躍的に高まり始めるだろうとNagarajanは予測しています。その頃には、電動パワーと管理の技術により、運転性能、システム効率、電力密度も改善されているでしょう。

 時間とともに、車両の電化のおかげで、燃料の燃焼をベースとしたプラットフォームではなし得ないイノベーションへの道が開かれます。大電力の供給が可能な次世代のEVでは、ガレージに駐車しておいて夜間は家庭に電力を供給するといった、新たな機能や用途のチャンスが生まれるでしょう。

 Nagarajanは次のように述べています。「今後数年のうちにEVに何か本当の動きが始まると、多くの可能性を新たに手にすることになります。スマートフォンで起きた進化が、車の世界でも見られるようになるでしょう。」

参照(外部リンク)

1.)    https://www.mckinsey.com/industries/automotive-and-assembly/our-insights/charging-ahead-electric-vehicle-infrastructure-demand
2.)    https://evadoption.com/ev-charging-stations-statistics/
3.)    https://www.marketwatch.com/story/china-not-tesla-will-drive-the-electric-car-revolution-2019-05-14
4.)    https://www2.greencarreports.com/news/1123160_why-norway-leads-the-world-in-electric-vehicle-adoption
5.)    https://insideevs.com/reviews/344001/compare-evs/ 

※上記の記事はこちらの技術記事(2019年6月10日)より翻訳転載されました。

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