2019年は電気自動車(EV)の販売台数が200万台を超え、いくつかのレポートでは、今後数年間で販売台数は年間800万台に達する可能性があり、中国がその先頭を行くだろうと予想しています。 

バッテリ管理システム(BMSEVの基本的な構成要素の1つであり、その効率、寿命、性能はきわめて重要です。これらの利点を実現するために、バッテリ・パック内の各セルでは、絶縁型のCANController Area Network)バス、差動デイジーチェーン通信、または他の独自ソリューションを使用して、セルの温度、電圧、電流に関するデータを監視し、報告します。 

1に示す標準的なBMSは、マイコンとそのサポート回路、低電圧側と高電圧側の絶縁、バッテリ・セル、バッテリ・モニタ・モジュール、および電流センサから構成されます。図1の「M」は、EVのエンジンを示します。バッテリ・セルの情報、温度、電圧は有線インターフェイス経由で伝達され、これは図中ではバッテリ・モジュール間の赤と青のツイスト線で示されています。 

 1:標準的な有線BMS 

有線ソリューションでセルへの接続と絶縁を提供することは、難易度が高くコストがかかります。また、事故発生時にワイヤが断線する可能性もあり、その場合はバッテリ・パック全体の交換が必要になります。これらの問題により、自動車メーカーやBMSソリューション・プロバイダは、代わりにワイヤレス通信ソリューションを検討しています。 

ワイヤレス・ソリューションでは、バッテリ・モジュールが直接BMSマイコンにバッテリ・セル情報を伝達するため、有線通信に伴う問題が解消されます。ただし、ワイヤレス・ソリューションを採用する場合には、有線システムに匹敵する性能を実現することが求められます。そのような重要な性能指標の1つがネットワーク可用性です。ワイヤレスBMSでは、これをワイヤレスBMS可用性と呼びます。 

ワイヤレスBMSでの接続性に関する重要な課題は、2.4GHzワイヤレス・ネットワークの可用性です。ドライバーがEVを始動させてリアルタイムでバッテリを管理できるように、ネットワークはすぐに使用可能になる必要があります。その点で、TI独自のワイヤレス・プロトコルの信頼性と性能が重要になります。つまり、毎回ドライバーが出発するときに、ボタン1つ押すだけで、ネットワークがすべての必要なコンポーネントを互いに接続することが求められます。 

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ワイヤレスBMS設計でISO 26262 ASIL Dに準拠 

  

 
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ワイヤレスBMS可用性は、任意の時点におけるワイヤレス接続デバイスおよびワイヤレス・メイン・ノードからのデータの可用性として測定されます。言い換えると、ワイヤレスBMS可用性とは、ワイヤレスBMSネットワークがデータ収集を実行しているかバッテリ状態モニタ・デバイスを制御している時間の平均パーセンテージです。図2のワイヤレスBMSネットワークでこの概念を示します。 

このネットワークでは、1個のメイン・コントローラが1個のバッテリ・パック・マイコンと8個のワイヤレス・デバイスに接続されています。SimpleLinkTm 2.4GHzCC2662R-Q1ワイヤレス・マイコン評価モジュールは、メイン・ノードのワイヤレス部分と複数のワイヤレス・デバイスから構成されています。各ワイヤレス・デバイスにコンパニオン・バッテリ・モニタ/バランサBQ79616-Q1が用意されています。BQ79616-Q1は、BMS内のバッテリ・セルの電圧と温度を測定し、充電状態と健全性状態のデータをメイン・ノード・コントローラを通じてBMSマイコンに報告します。 

 28個のワイヤレス・デバイスを接続するワイヤレスBMSシステム 

パケット送信がエラーになった場合には、デバイスがいずれかのワイヤレス・ノードまたはワイヤレス・メイン・ノードからの情報を所定の時間内に正しく解釈できなくなるため、ネットワークはこの時間中、使用不可とみなされます。 

正確な情報が得られないとバッテリに不具合が生じて危険な状況に陥るおそれがあるため、データは正確かつ迅速に処理される必要があります。それが、ワイヤレスBMSの安全性と信頼性がきわめて重要である理由です。 

10ノードのネットワークの場合、TIのワイヤレスBMSプロトコルは10-7以下のパケット・エラー率を達成できます。これは、ワイヤレスBMS52.222時間稼働している間、任意のノードのデータが使用できない時間が100msであることを意味し、ワイヤレス・デバイスの稼働時間が99.9999%以上であることを示します。各ワイヤレス・デバイスは互いに独立しているので、ワイヤレスBMSネットワークの可用性も99.999%以上と推測できます。 

TI独自のワイヤレス・プロトコルとCC2662R-Q1マイコンにより、TIのワイヤレスBMSソリューションは99.999%という比類のない可用性でセキュアなデータ通信を実現し、条件の厳しいバッテリ設置環境でのワイヤレスBMSの使用を可能にします。これらの環境が厳しいのは、バッテリが限られたスペース内に配置され、信号が送信先に達するまでに各種の金属板に当たって大きな減衰や反射が生じるためです。 

業界最高レベルのネットワーク可用性を提供する先進的ワイヤレス・プロトコルによって、高コストで重く、修理や整備の必要性もある配線を自動車設計から省くことが可能になり、世界中のEVの信頼性と効率を高められることが、TIのワイヤレスBMSソリューションにより実証されます。 

SimpleLinkワイヤレスBMSソフトウェア開発キットをダウンロードし、SimpleLinkワイヤレスBMS評価モジュールを購入することで、設計を今すぐ開始できます。 
 
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上記の記事はこちらの技術記事202117日)より翻訳転載されました。 
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