アプリケーションに応じた最適な静止電流について


超低消費電力システムの全ての設計者にとって、バッテリ寿命は課題のひとつです。フィットネス・トラッカーの再充電はいつ必要になるのか?また、一次電池の場合、スマート・メータの保守とバッテリ交換が必要になるのはいつか? 設計目標はバッテリ駆動時間の最大化です。フィットネス・トラッカーの場合、駆動時間は1週間で良いかもしれませんが、スマート・メータは20年以上動作します。この駆動時間を達成するには、さまざまなサブシステムで、何を考慮しなければならないでしょうか?

多くのシステムでは、1つまたは2つの電圧レールが常に有効になっています。このレールはシステムのマイコン、重要なセンサ、あるいは通信バスに給電しています。このような常時オンのレールは、バッテリ駆動時間を延ばすためには、効率が非常に高くなければなりません。サブシステム設計を適切に行うことで、常時オンの各サブシステムの消費電流を最小限に抑えることができます(多くの場合、全体で10µAあるいは1µA未満にさえなります)。この技術記事(英語)で説明したように、これらのサブシステムの最適化からメリットを得るには、超低消費電力の電源が必要です。超低消費電流のレールでは、これは静止電流(IQ)が60nAの『TPS62840』など、IQが極めて低い電源を意味します。

各電源の動作中の電流消費を最小化することが最も重要であると思われるかもしれません。静止電流(IQ)が小さくなれば効率が向上し、バッテリの電力消費が減ることでバッテリ駆動時間が延びます。しかし、この効率向上は常に重要でしょうか?ディスプレイや一部のセンサなど、比較的大きな負荷電流で動作するシステムでは、静止電流(IQ)による電力よりも出力電力の方がはるかに大きいため、答えは「いいえ」です。例えば、フィットネス・トラッカーのディスプレイが12V、5mA(合計60mW)を消費する場合、3.6Vのバッテリから消費される100µAの静止電流(IQ)(合計0.36mW)は微々たるものです。

この種のサブシステムでもっと重要なことは、ディセーブル時の電力消費です。超低消費電力システムでは、バッテリを節約するために、電力消費が大きいサブシステムの電源をほとんどの時間オフにします。このように、シャットダウン電流はシステムのバッテリ寿命にとって非常に重要です。シャットダウン電流は漏洩電流とも呼ばれますが、その値が大きい場合には、シャットダウン電流をさらに減らすために、電源からサブシステムを切り離す負荷スイッチを追加する必要があります。高効率バック・コンバータ『TPS62748』は、そのようなシステム向けに負荷スイッチを備え、静止電流(IQ)は非常に低い360nAです。

負荷スイッチを使用しない場合、デバイスを通しての負荷へのパスがあれば、デバイス自体とその負荷の両方に流れ込む漏洩電流を考慮しなければなりません。これは昇圧コンバータでよく見られる状況であり、このパスを切断するために専用回路が追加される場合があります。例えば、昇圧コンバータ『TPS61046』は内部に絶縁スイッチを備えています。また、バイパス動作が可能になるよう、このパスを最適化する場合もあります。その場合、ディセーブル状態のデバイスで消費されるシャットダウン電流は50nA未満です。

特定のサブシステムに対して、超低消費電流(IQ)または超低シャットダウン電流のいずれか適切な種類のデバイスを選ぶことが重要です。このような微妙な違いは、ウェアラブルからスマート・メータ、医療機器など、あらゆる超低消費電力システムで一般的なものであるため、アプリケーションの要件をよく検討したうえで、最適なソリューションを選択してください。 

参考情報

+アプリケーション・ノート(英語)"Low Iq: What it is, what it isn’t, and how to use it"

+技術記事「超低消費電力アプリケーションでデューティ・サイクルを設計するためのWEBENCHの使用方法

+スマート・メータ向けリファレンス・デザインはこちら

+ウェアラブル機器向け超低消費電力設計はこちら

 

※上記の記事はこちらの技術記事(2019年7月15日)より翻訳転載されました。

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