Other Parts Discussed in Post: LM5156-Q1, LM62440-Q1, LM25149-Q1

産業用、車載、パーソナル・コンピューティングの各アプリケーションで、密度と相互接続の強化が引き続き進行中です。これらのシステムでフォーム・ファクタと機能を改善するために、多様な回路が互いに緊密した場所に詰め込まれています。このような状況下で、電磁干渉 (EMI) の影響低減はシステム設計の重要な検討事項になっています。

図 1 に、この種の多機能システムの 一例として、車載カメラ・モジュールを示します。ここでは 2メガピクセルのイメージャを、4Gbps シリアライザや 4チャネルのパワー・マネージメント IC (PMIC) に近接した場所に詰め込んでいます。複雑性と密度は確実に高まりますが、その副次的結果として、イメージャや信号処理素子のような高感度回路が、大電流と高い電圧を伝送する PMIC のごく近くに位置することになります。このような配置が原因で、一連の回路は必然的に電磁干渉を引き起こし、高感度素子の機能に影響を及ぼします。ただし、設計段階で設計者が十分に注意を払えば事情は異なります。

 図 1車載用カメラ・モジュール

電磁干渉 (EMI) は、2通りの形で表面化する可能性があります。図 2 に示すように、モーターのドリルと同じ電源に無線を接続することを考えてみましょう。この場合、モーターから (配線を経由する) 伝導型で高感度無線システムの動作が影響を受けます。これらは同じ供給元から電力を受け取っているからです。モーターは同時に、(空中を経由する) 放射型電磁波という形でも無線の機能に影響を及ぼします。モーターが空中へと電磁波を放出し、無線のアンテナがその電磁波を受信する形です。

最終機器のメーカー各社が、さまざまな供給元から調達した各種部品を組み合わせるときに、干渉信号生成回路と高感度回路が平和裏に共存して正常に動作できることを保証する唯一の方法は、一式の共通ルールを制定することです。つまり、干渉信号生成回路に上限を設定し、高感度回路はそのレベルの干渉に対処できるように設計します。

 図 2伝導型経路と放射型経路に起因する電磁干渉

電源設計時に EMI を低減するうえで時間の節約とコスト効率の改善を方法の詳細については、ホワイト・ペーパー『電源のEMI削減のための短期間で費用対効果が高いイノベーション』をご参照ください。

一般的な各種 EMI 規格

干渉に制限を設けるルールは、自動車業界向けの CISPR (国際無線障害特別委員会) 25 や、マルチメディア機器向けの CISPR 32 など、各種業界標準の仕様という形で制定済みです。CISPR の各種規格は、EMI の設計にとって重要です。これらの規格は、あらゆる EMI 低減方式のターゲット性能を決定するからです。各種 CISPR 規格は、図 3 に示すように、干渉のモードに応じて伝導型と放射型それぞれの制限に分類できます。図 3 の各プロットにある横棒は、標準的な EMI 測定機器を使用して測定したときに、試験中の装置が耐えることのできる伝導型と放射型それぞれの最大電磁波制限を表しています。

 図 3:伝導型と放射型の各 EMI に関する代表的な規格

EMI の原因

各種 EMI 規格との互換性があるシステムを製作するには、EMI の主な原因について明確に理解する必要があります。最新の電子システムで非常に一般的な回路の 1 つは、スイッチ・モード電源 (SMPS) です。大半のアプリケーションで、この種のスイッチング電源はリニア・レギュレータに比べて大幅な効率向上をもたらします。ただし、この効率向上には代償が必要です。SMPS の一部であるパワー FET (電界効果トランジスタ) のスイッチング動作は、EMI の主な生成源になるからです。

図 4 に示すように、SMPS のスイッチングという性質は、不連続な入力電流、スイッチング・ノードでの高速エッジ・レート、電源ループ内に存在している複数の寄生インダクタンスが引き起こすスイッチング・エッジ周辺での付加的なリンギングにつながります。不連続電流が 30MHz 未満の帯域に影響を及ぼすのに対し、スイッチング・ノードの高速エッジとリンギングは 30 ~ 100MHz と 100MHz 超過の各帯域に影響を及ぼします。

 図 4:SMPS 動作中の EMI の主な原因

EMI を低減するための従来型と先進型の各手法

従来型の設計は、スイッチング・コンバータが生成する EMI を低減するために 2 つの主な方式を使用しています。どちらにも、それぞれ代償が関係しています。低周波 (30MHz 未満) の電磁波に対処し、該当する各種規格に適合するには、スイッチング・コンバータの入力側に値の大きいインダクタ / コンデンサを組み合わせたフィルタを配置しますが、コストの上昇や電力密度の低いソリューションにつながります。

ゲート・ドライバの実質的な設計全体でスイッチング・エッジを低速にすると、通常は高周波の電磁波を低減できます。この方式は 30MHz 未満の帯域で EMI を低減するのに役立ちますが、エッジ・レートの低下はスイッチング損失の増大につながり、ソリューションの効率が低下します。言い換えると、EMI を低減させたソリューションを実現するためのトレードオフとして、電力密度や効率の低下が固有の特徴になります。

のトレードオフを解決し、高電力密度、高効率、低 EMI という利点の組み合わせを実現できるように、LM25149-Q1、LM5156-Q1、LM62440-Q1 という TI の各種スイッチング・コンバータとコントローラは、図 5 に示した多数の手法を設計に組み込んでいます。スペクトラム拡散、アクティブ EMI フィルタイング、打ち消し用巻線、パッケージの革新、入力バイパス・コンデンサの内蔵、注目する特定の周波数帯域向けにカスタマイズした特定の真のスルーレート制御手法など、これらの方式については、上記ホワイト・ペーパーと、参考情報のトレーニング・ビデオで詳細に説明しています。

 図 5:EMI を最小化する目的で TI のパワー・コンバータとコントローラが搭載している各種方式

まとめ

低 EMI を重視した設計を実施すると、開発サイクル期間を大幅に短縮すると同時に、基板面積の節減やソリューション・コストの削減にもつながります。TI は、EMI を低減できるように、多くの機能とテクノロジーを提供しています。TI の各種 EMI 最適化済みパワー・マネージメント・デバイスを採用すると、大量の手戻りや手直しの必要なしで、TI の部品を使用している各種設計が各種業界規格に確実に適合するようになります。設計プロセスをシンプルにし、開発中の最終製品が電力密度や効率を犠牲にせずに EMI の制限を下回る水準を維持できるようにするうえで、この情報と関連コンテンツがお役に立てれば幸いです。

参考情報:
低EMIについての詳細
トレーニング・ビデオ(英語)
+ホワイト・ペーパー(英語):
An overview of conducted EMI specifications for power supplies
An overview of radiated EMI specifications for power supplies

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上記の記事はこちらの技術記事(2021年4月21日)より翻訳転載されました。 
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