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ターン・ライト、ブレーキ・ライト、テール・ライトなどの車載照明用LED回路設計では通常、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)などのディスクリート部品を実装します。ディスクリート部品が目につくのは、簡単で信頼性があり安価という、ありふれた理由によるものです。それでも、LED数が増え、プロジェクトの要求事項が大きくなると、ディスクリート部品を使った設計を考え直す価値があります。よくある誤解をいくつかご説明しましょう。

ディクリート設計は簡単である

LEDは電流駆動デバイスです。安定化した電流供給によりLEDをオンにするには、トランジスタを使用することが最も簡単な方法です。図1に示すように、このようなトランジスタを用いた回路を基本ブロックとして繰り返し使用することで、プロジェクト全体にわたる任意の数のLEDストリングを駆動できます。

図1:ディスクリートのLED定電流回路

 

LED数が多い、または難しい要件のプロジェクトでは、回路設計が込み合って見えるだけでなく、複雑な分析も必要になります。リア・コンビネーション・ライト(RCL)モジュールには、多数のLEDを駆動するBJTが満載され、表1に挙げた仕様が含まれる可能性があります。

 

仕様

考慮事項

実装

機能

テール・ライトやストップ・ライト用のLEDと同じ

モード表示のための輝度レベル調整

アナログ電流またはパルス幅変調(PWM)による調光

バッテリ電源

公称:9V~16V

範囲:6V~40V

始動/停止、ロード・ダンプなどの過渡電圧に耐える安定した出力電流

定電流出力回路(図1参照)

診断機能

開放

故障の検出、障害対応の実装

OFAF(One-fail-all-fail、1つの障害が発生すれば全体を障害とする機能)回路

 

表1:RCL仕様例

 

図2に示すRCLの例のように大量の部品数を使用すると、設計製造リスクが増え、慎重な回路分析を要します。

図2:ディスクリートによるテール・ライトとストップ・ライトの回路例

 

ディスクリート設計は信頼性が高い

堅牢なLED回路設計は、電圧、電流、温度の変動に対応しなければなりません。LEDの順方向電圧に達すれば、電流が流れ、電流の変化に比例して輝度が変化します。しかしながら、順方向電圧を超えるわずかな変化でLED電流は指数関数的に増えます。過剰な順方向電流はLEDにダメージを与えます。

また、消費電力と放熱についても分析が必要です。温度上昇の一因となる要因には、回路の電力効率の悪さ、LEDオン時間の長さ、温かい環境などがあります。熱性能が悪いとLEDは電流を大量に消費し、結果として劣化します。

LEDの開放/短絡故障を診断するフィードバック回路は、システムの信頼性を向上させます。このような回路では部品数は増えますが、利点がいくつかあります。例えば、RCL内でLEDが故障すると、そのモジュールの輝度は市場の規制基準に適合しなくなります。図3に示すように、車体制御モジュール(BCM)では、照明モジュールの正常なLED負荷と単独の負荷開放を区別することは難しいかもしれません。LEDが故障した場合、OFAF回路を実装していれば全LEDがオフになり、開放負荷を発見しやすくなります。OFAFはLEDの劣化も防止します。

 

図3:BCMによるLED駆動モジュールの故障診断

 

LED回路は電磁両立性(EMC)に対するエミッションおよびバルクカレント注入(BCI)イミュニティ基準を満たさなければなりません。EMCを無視すれば、LED駆動モジュールが他のアプリケーションに干渉したり、他のアプリケーションから影響を受けたりする恐れがあり、運転者のエクスペリエンスを悪化させます。

ディスクリート設計は安価である

BJTは安価なコモディティ・デバイスです。しかしながら、LEDシステム内で数十、数百のBJTを使った設計では、部品数とシステム費用が増加します。設計、デバッグ、組み立てに費やすリソースを考えると、統合型LEDドライバ・ソリューションの使用により時間と費用を節約できます。

LEDのリニア・ドライバICには、汎用シングル・チャネルから専用マルチ・チャネルまであります。図4に示すように、TPS92611-Q1などの統合型ソリューションによって、図2のRCL回路から多数のBJTおよび他のディスクリート部品を置換できます。

図4:OFAF用に接続されたフォルト・バスを備えたTPS92611-Q1

 

LEDのリニア・ドライバは、部品数とシステム費用の削減に加え、ドロップアウト電圧の低い定電流出力を提供し、アナログ電流またはPWM調光による輝度の調節が可能です。過熱保護および短絡/開放診断機能により、性能が安定し、デバイス間にOFAFフォルト・バスを接続してシステム信頼性を保証できます。TPS92611-Q1および他のリニアLEDドライバは、ディスクリート・ソリューションと比較して強力なEMC性能も提供します。

LEDドライバのICソリューションは、特にLED数が多い、または複雑な要件のアプリケーションにおいて、ディスクリート回路に対するコスト効率の良い代替案となります。これらの簡単な設計、高信頼性・高性能、価格競争力について理解したら、ディスクリート回路をやめ、今すぐ統合型リニアLEDドライバに切り替えましょう。

その他のリソース

 

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※上���の記事はこちらのBlog記事(2019年5月29日)より翻訳転載されました。
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