電圧増倍回路では、簡単な方法により、低電流の高電圧出力を生成することができます。この回路は、数十~数千Vの低電力の高電圧を供給する必要があるプリンタ、センサ、荷電粒子システムなどのアプリケーションに利用できます。フライバック・コンバータや単巻トランスでの昇圧に必要とされるような電源トランスを使用しないため、増倍回路はコストと単純さの両面で望ましい回路です。

図1は、3つのステージから成る電圧増倍回路の動作を示した回路図です。第1の“倍電圧”ステージは、C1/D1/C2/D2で構成されています。入力電圧VACは、VACに等しいピーク・ツー・ピーク振幅を持つ交流の方形波または正弦波です。VACが負側に-VAC/2までスイングすると、ダイオードD1に電流が流れてコンデンサC1が充電されます(数字��1を囲む緑色の矢印)。ここでは、ダイオードの順方向降下は無視しましょう。VACの、+VAC/2に相当する正の1/2サイクル中に、C1に蓄積された電荷がD2を通ってC2に移動します(数字の2を囲む赤色の矢印)。C2はVACまで充電されます(入力電圧からのVAC/2と、C1にかかる電圧からのVAC/2)。これにより、VAC/2からの電圧が、その2倍のVACになります。

第2の倍電圧ステージは、C3/D3/C4/D4で構成されています。負入力サイクル中に、C3はVACまで充電されます(数字の3を囲む緑色の矢印)。この点は、D1とD3に電流が流れた場合、C3にかかる電圧がC2に等しくなることから明らかです。同様に正入力サイクルでは、C4がD4を通って(数字の4を囲む赤色の矢印)2*VAC(グランド基準)まで充電されます。これは、C2が既にVACの電位まで充電されているためです。

第3のステージは、C5/D5/C6/D6で構成され、第2ステージと同じように動作します。コンデンサC5は、VACまで充電され、その電圧はC6に移動して前のステージに加算されます。各ステージが理想的な形で次々にVACを加算することで、出力電圧は簡単に増加していきます。

図1: ダイオードとコンデンサのカスケード接続による、交流電流(AC)電圧を使用した電圧増倍回路

回路の動作から、上側の一連のコンデンサ間にあるノードの電圧は、入力電圧によって切り替わることがわかります。これらのノードの電圧は、いずれも2つの電圧レベルの間で変化し、デルタはVACに等しくなっています(ダイオードの電圧降下は無視します)。上側のコンデンサはチャージ・ポンプとして機能し、エネルギーを下側のコンデンサに伝達します。出力電圧は下側の直列スタック・コンデンサを介して生成され、各コンデンサがVACまで充電されて一定の出力電圧を保持します。この回路は軽負荷時には高精度ですが、各スイッチング・サイクルで一定量のエネルギーしか伝達されないことから、負荷電流の増加にともない出力電圧が低下し始める可能性があります。負荷電流が増加した場合の電圧レギュレーションを改善するには、さらに大きな容量値のコンデンサを試してみてください。出力への負荷が軽いと最適に動作する理由はこの点にあります。

ダイオードの順方向電圧降下によって、各ステージから電圧が減算されます。第1の倍電圧ステージの出力電圧は、そのピーク・ツー・ピーク入力電圧から2つのダイオードの電圧降下を引いた値、つまりVC2 = VAC – 2VDに等しくなります。第2ステージの出力電圧はこの電圧を起点として倍増し、さらに2つのダイオードの電圧降下が減算されるため、VC4 = 2VAC – 4VDとなります。第3ステージの出力電圧は、VC6 = 3VAC – 6VDに等しくなります。このため、2つのダイオードの電圧降下を大きく上回るVACから開始するのが最適な方法です。

アプリケーション・レポート、『TLC 555-Q1 Used as a Positive and Negative Charge Pump』には、正と負の両方の出力電圧用に電圧増倍回路を使用した設計例が記載されています。

電圧増倍回路では、ほぼどのようなスイッチング電圧からでも簡単な方法で高電圧出力が生成できます。さらに高い出力電圧が必要な場合は、簡単にステージを追加できます。ダイオードの順方向電圧降下と小さな容量値は、負荷電流の増加に伴い出力電圧が低下する原因になります。しかし、この制限さえ理解していれば、電圧増倍回路によってトランスもインダクタも使用せずに出力電圧を上げることができます。このトピックの詳細については、EETimes Power Tipsの投稿記事、『Increase Output Voltage with a Voltage Multiplier』を参照してください。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2016/07/20/power-tips-multiply-your-output-voltage

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