スマート化だけでは不十分 - 最新のサーモスタット事情


 IoT技術についての話題では、「スマート」という言葉が実に無造作に使われていますが、厳密にはどういう意味なのかと疑問に思う人もいるかもしれません。もし誰かに、「スマート・サーモスタット」の意味について尋ねられたら、次のように説明することができるでしょう。

  • ユーザーが家や部屋に出入りするときにユーザーの行動を学習
  • 液晶ディスプレイ(LCD)、あるいはスマートフォンやタブレットに温度や現地の気象情報を表示
  • 温度、湿度、気圧、周囲の明るさ、空気の質を測るセンサや接近センサなど、さまざまなセンサを感知する機能の搭載
  • セキュリティの脅威から自己防衛
  • バッテリ駆動の場合の低消費電力と、バッテリの交換や充電不要の長期間作動
  • 遠隔の設定や制御を行える機能の搭載

これは、1つのデバイスにしては多すぎる要求と思われるかもしれませんが、専用のArm® Cortex®-M4アプリケーション・プロセッサと認証済みのWi-Fi®ネットワーク・プロセッサを搭載したデュアルコア・ワイヤレス・マイコン、『CC3220』などのSimpleLink™ Wi-Fi マイコンを搭載したサーモスタット製品では、これらの機能を実現することができます。『CC3220』 ICの図を以下に示します。

図1:『CC3220』デュアルコア・ワイヤレス・マイコン

スマート・サーモスタットが、接近検出に基づいてユーザーの在室パターンを学習すると、次の論理ステップとして、在室パターンを予測することになります。これは、ジオフェンシングのような機能です。SimpleLinkマイコンに接続されたサーモスタットにはWi-Fi接続が統合されているため、ユーザーは離れた場所からの制御やモニタリングを実行できます。さらに、このサーモスタットはスマートフォンの位置情報機能を利用し、ユーザーが自宅から特定の距離範囲に入ると、ユーザー個人の快適設定に合うよう調整することができます。

多くのサーモスタットにはバッテリまたは電源が必要であり、ジオフェンシングのためにはサーモスタットがインターネットやクラウドベースのサービスと繰り返し交信する必要があることから、特にバッテリ駆動のサーモスタットの場合は、消費電力が小さいことが非常に重要となります。SimpleLinkワイヤレス・マイコンの消費電力は、前世代の製品よりも30%改善されています。設定可能な電力モードには135uAのスリープモードと、ウェイクアップからの200msのセキュアな接続が含まれています。

もう1つに省エネ機能として、独自のSimpleLinkネットワーク学習アルゴリズム(NLA)も搭載されています。スマート・サーモスタットなど、接続されたデバイスの消費電力は、ローカルのWi-Fiアクセスポイントの挙動に大きく影響されるため、NLAは、常時接続モードでのアクセスポイントの挙動をリアルタイムで学習し、消費電力を最適化します。NLAに加えて、SimpleLinkワイヤレス・マイコンは、異なる消費電力プロファイルの3つの接続モードに対応しています。デバイスは、「常時接続モード」(単3形乾電池2個の寿命が1年以上)または「断続的接続モード」(同3年)に設定できるほか、システム要件に応じて構成することができます。

信頼性を損なわず、統合コストを削減
SimpleLinkワイヤレス・マイコンの統合ネットワーク・プロセッサコアにより、アプリケーション・プロセッサコアのWi-Fiおよびインターネット通信処理の負荷が軽減され、その分のリソースをアプリケーションのさまざまな機能に利用できるようになります。ネットワーク・プロセッサのWi-Fi接続は、すでにWi-Fiアライアンスによって完全に認証されており、この認証が譲渡可能であることから、多大な時間と労力を要することの多いWi-Fi認証の作業が不要となります。

一部のスマート・サーモスタットでは、Amazon Web Services(AWS)、Apple HomeKit、Microsoft Azure、IBM Watsonなどのクラウドベースのサービスとの通信が必要となります。SimpleLinkマイコンではスターター・ソフトウェアのサンプルやプラグインを利用して、販売までの期間を短縮することができます。

さらに、世界的な展開のためには、Wi-Fi接続の互換性が非常に重要です。TIは、現在までに210以上のアクセスポイントに対して徹底的なテストを実施し、他のソリューションと比較して信頼性と堅牢性に優れたパフォーマンスを確保しています。

自己防衛
接続にはセキュリティの問題が付きものです。SimpleLinkマイコンは、無線通信転送を含め、アプリケーションストレージからランタイム動作までの保護を提供します。知的所有権(IP)、コード、データ、ユーザーの個人情報、ファイルシステムおよびセキュリティキーなど、ほとんどのリソースが保護されます。両方のプロセッサコアで、ハッキング、悪質な盗難、敵対的のっとりなどの脅威から保護するための徹底的なセキュリティ強化が採用されています。ハードウェアベースの暗号化エンジンなどの機能によって、外付けのセキュリティチップの利用が削減されます。このようなセキュリティチップの利用は、シングルチップの製品と比べてコストや複雑性が増すほか、脆弱性が生じる可能性もあります。

目的にふさわしいセンサ
SimpleLinkワイヤレス・マイコンをベースとして、さまざまな環境センサをデバイスに直接接続したり、離れた部屋にあるリモートセンサーとしてワイヤレスで接続したりすることで、スマート・サーモスタットを構築することができます。チップに搭載された4チャンネルのアナログ-デジタル変換器(ADC)がアナログセンサと処理するコアを接続します。あるいは、周辺機器のインターフェイス(I2Cなど)がデジタルセンサとつながる場合もあります。たとえば、マイクをADCに接続し、シンプルなコマンドの音声認識を実装することも可能です。また、デジタル温度センサがI2Cポートを使用するケースも考えられます。空気の質、湿度、気圧、周辺の明るさ、接近または在室センサなどによっても、省エネとサーモスタットの知能強化が実現されます。

音声認識
音声による起動を導入することで、スマート・デバイスやスマート・サーモスタットの制御をさらに簡素化するという流れが強まっています。TIは、音声による起動のための2種類のオプションを提供しています。1つは、シンプルな1台のマイクによるアプローチを採用する『CC3220』であり、もう1つがTIの最新の『C55xx』デジタル信号処理(DSP)ICを使用し、音声による起動を実行する、より洗練された4台のマイクによるオプションです。これらのオプションをAWS、Apple HomeKit、Microsoft AzureまたはIBM Watsonなどのクラウド接続製品と組み合わせると、さらにスマートなサーモスタットを確立することができます。

明るい未来
ユーザーからのフィードバックやその他の研究に基づき、ほとんどの製品が追加の接続機能により拡充されていますが、この接続機能は複雑なものとなる場合もあります。SimpleLinkマイコンでは、このプロセスが大幅に簡略化されます。ひとまとまりのSimpleLink SDKプラットフォームのアプローチには、センサやその他のワイヤレス通信プロトコルおよびインターフェイスなどの関連技術や、ソフトウェアプラグイン、低レベルドライバ、コードサンプルおよびハードウェア設計キットなどの開発ツールが含まれています。

たとえば、第2、第3世代のスマート・サーモスタットにWi-Fi以外のワイヤレス通信オプションを追加したい場合には、Bluetooth® Low Energyをスマートフォンに対する直接的なインターフェイスとして追加したり、Sub-1 GHzの無線を使って建物内のすべてのセンサと接続したりすることができます。このワイヤレス・センサ接続を利用し、ゾーンの温度感知および制御を行うアプリケーションを実装することもできます。スマート・サーモスタットを、在室センサまたはモーション・センサ、および室内の離れた場所にある温度センサとワイヤレスに接続することもできます。モーション・センサは、誰かが入室したときにサーモスタットに信号を送信し、電気制御の通気ベントのダンパーを開くことができます。室温は、温度センサによって感知され、スマート・サーモスタットに保存されている設定に合わせて制御されます。

スマート・サーモスタットとは一体何なのかという最初の質問の答えが、お分かりいただけたでしょうか?SimpleLinkワイヤレス・マイコンおよびSimpleLinkマイコン・プラットフォームは、現在、そして未来において、サーモスタットを望むままに「賢く」するお手伝いをします。

製品情報(英語)

技術資料(英語)

※SimpleLinkは、Texas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年4月26日)より翻訳転載されました。
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