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  • 電源 IC: 超高速の内部補償型ACMトポロジ – その活用法

    内部補償型ACM(Advanced Current Mode)は、テキサス・インスツルメンツが開発した新しい制御トポロジであり、内部補償によって真の固定周波数の変調および同期をサポートします。これは基本的に、エミュレートされたPCM(Peak Current Mode)制御に似ています。PCMは入力電圧および出力電圧の範囲全体にわたって安定性を保持し、高速な過渡応答を実現します。ACMがPCMと違う点は、ランプ・ベースのピーク電流モード制御方式であり、外部補償は使用せずに、内部でランプを生成して真の固定周波数を実現することです。また、ACMは電源段(インダクタおよびコンデンサ)の変動に対して高い耐性を持ちます。ここではACMの利点についてさらに詳しく取り上げていきます。

    内部補償型ACMを使用する理由

    外部補償回路を使用せずに真の固定周波数または擬似固定周波数をサポートする制御トポロジは、いくつかあります。ただし、これらのトポロジには欠点もあります…

  • オートモーティブ: HEV/EV用バッテリでの電流センシングについて

    ハイブリッド車(HEV)やEVの主なエネルギー源はバッテリ(電池)ですが、バッテリの効率的な制御には、効率的なバッテリ監視システムが必要になります。バッテリ監視システムは主に、健全性(SOH:State of Health)と充電状態(SOC:State of Charge)を評価するために使用されます。SOHおよびSOCに関する詳細情報を得るためには、バッテリ監視システムに高精度のセンサを内蔵することが重要です。

    一般的なバッテリでは、電流、電圧、および温度センサによって以下のパラメータを測定しながら、バッテリを損傷から保護します。

    • (充電時に)バッテリへと流れる電流、または(放電時に)バッテリから流れる電流
    • パック電圧
    • 個々のセル電圧
    • セルの温度

    図1は、バッテリ制御ユニットのブロック図における電流センサの位置を示しています。

    図1:バッテリ制御ユニットにおける電流センサの位置

    HEV/EV内のシステムの主なエネルギー源がバッテリであるとき…

  • オートモーティブ: ブラシ付 DC モータのリップル・カウンタが革新的なシート・ポジション・メモリ機能を実現

    家族や友人など、複数で1台のクルマを共有する場合、ドライバーはその都度、運転席のシートやハンドルの高さ、ハンドルやアクセルペダルからの距離、シートの背もたれの角度、バックミラーとサイドミラーの角度などを調整する必要があります。

    多くの高級車には、メモリ機能付きのシートおよびミラーが搭載されており、好みの角度や高さに調整した自分だけのシート・ポジションを記憶することができます。この機能があれば、ドライバーが変わるたびにシートやミラーを再調整する必要がなくなり、時間の節約ができます。

    過去のブログ記事「ドライバー・シートに革新をもたらす」(英語)では、小型のブラシ付DCモータが多くのシート調整軸を制御していることについて取り上げています。従来の技術では、シートの位置を計測するためにDCモータの筐体に取り付けられた磁気ホール効果センサを使用していました。まずモータ・シャフト内で磁気ポールを回転させ、センサが感知するための磁場を作り出します…

  • 電源 IC: コントローラのパワーアップのためのユニークな手法

    ツールへの理解が深まれば深まるほど、ツールは強力になります。その一例がTektronix 576カーブトレーサーです。一見すると、3端子バイポーラ接合トランジスタ(BJT)あるいは電界効果トランジスタ(FET)の計測のためだけの機械に見えます。メーカーの技術資料には、そのように記載されていました。有能な製品/不良分析エンジニアがそうでないことを教えてくれるまでは、私もそう思っていました。そのエンジニアは、この機械が電流と電圧をMV/nA(メガボルト/ナノアンペア)に至るまで正確に測定できるまさに精密な電圧/電流源であることを実証してくれました。電流/電圧(I-V)曲線を動的でグラフィカルに測定することから、このツールはラボで使える最も強力な回路デバッギング・マシーンのひとつとなっています。

    最初は、燐光体を使った陰極線管(CRT)モニタと機械式スイッチを備えた旧式のアナログマシンが1kV強の電圧を提供できるかどうかについては、私は疑問を感じていました…

  • アナログ: 革新的な電動工具ソリューションの開発を促進する高電力密度の需要

    近年、電動工具向けのDCモータは、ブラシ付きモータから、より信頼性の高い、効率的なブラシレスDC(BLDC)に大きくシフトしています。チョッパ構造のような従来のブラシ付きDC技術は、双方向スイッチを使用するか否かにより、1つか2つのパワーMOSFETを実装する傾向にあります。一方、3相BLDC構造では3つのハーフ・ブリッジまたは最小でも6つのFETを必要とするため、ブラシ付きからブラシレスにシフトすることで、世界の電動工具向けFETの全市場におけるFETの出荷量は3倍から6倍に増えることを意味します(図1)。NexFET™パワーMOSFET製品を有するTIにとって、この市場トレンドは喜ばしいことです。

    図1:ブラシ付きからブラシレス技術へのシフトは、FETの数が6倍に増えることを意味する

    しかし、BLDCデザインは、これらのFETに新しい技術要件を突きつけます。例えば、ボード上のFETの数が6倍に増えることで、モータを駆動するにあたりプリント基板の占有面積を6倍まで拡大する必要があるなら…

  • アナログ: 高速、高電圧絶縁のための絶縁LVDSバッファ

    TI システムおよびアプリケーション・マネージャ アナン・カマス(Anant Kamath)         

    絶縁は、システムの2つの部分の間で信号と電力の伝達をゆるし行いながら、直流(DC)と不要な交流(AC)を阻止します。絶縁は、作業者や低電圧回路を高電圧から保護する他、ノイズ耐性の向上、通信サブシステム間におけるグランド電位差を処理するため、さまざまなアプリケーションで使用されています。

    CMOSあるいはTTLレベルの入出力を持ったアイソレータは、デジタル・アイソレータと呼ばれます。デジタル・アイソレータを使用すると、アイソレータとの通信速度が遅い場合や、配線距離が数インチに制限されている場合に、同じPCB上の2つの異なる電圧ドメイン間を絶縁できます。

    長い基板配線やケーブルおよびコネクタを介した高速データ通信には、CMOS信号よりも低電圧差動信号(LVDS)の方が適しています。LVDSには、CMOSに比べて低い消費電力や電磁放射…

  • アナログ: 小型アプリケーション向けの高性能なUSB Type-C保護

    最近は、ノートブックPCやセットトップ・ボックス(STB)でもUSB Type-C™コネクタを見かけるようになってきました。しかし、USB Type-Cが携帯電話やウェアラブル端末、その他のポータブル電子機器のような小型フォームファクタのアプリケーションに採用されるようになるにつれ、システム設計者は設計する際にこれまでとは異なる点に考慮する必要が出てきました。最大の課題は、自社システムのフォームファクタと電力消費を引き続き最小化しながら、高い電源供給率、リバーシブルなコネクタ形状、高いデータ転送率、HDMIやDisplayPort、Thunderboltなどの代替規格のサポートなど、様々な新機能の領域をどのように活用するかという点にあります。

     また、新しいUSB Type-Cコネクタは、USB Type AやMicro-USBコネクタ向けの標準的なESD保護よりも困難な保護要件を考慮しなければなりません。ピン間隔が非常に狭いUSB…

  • DLP®︎ テクノロジ: デジタル・サイネージにメリットをもたらすDLPテクノロジ

     デジタル・サイネージは、消費者が情報を受け取る方法に変革を起こしています。企業は積極的に新しい技術を模索し、自社の製品やサービスについて消費者に関心を持たせ、引き付けようとしています。しかし、多くの企業や消費者は、デジタル・サイネージはフラット・パネル・ディスプレイに限定されるものと考えています。フラット・パネル・ディスプレイには、特にサイズやスペースなど、いくつもの制約があります。フラット・パネル・ディスプレイは物理的に大きく、重く、平らであり、結局、長方形のデザインに限られているため、差別化するための新しい方法を見つけるのが困難でした。図1は、比較的小さな投影ユニットが展示会場やショーフロアで大きなフリーフォーム・ディスプレイとして利用できる例を示しています。プロジェクション技術を組み込むことは、サイネージ・ソリューションの効果を高め、より魅力的な視聴体験を提供できるようにする、デジタル・サイネージの次のステップとなります…

  • アナログ: 評価モジュールを使用してオペアンプ容量性負荷を安定させる3つの方法

    容量性負荷は、オペアンプ回路を不安定化させる原因となり、結果として大きなオーバーシュートや、リンギング、設定時間の遅延を引き起こす可能性があります。ひどい場合には、持続的振動を引き起こします。これらの問題が生じる原因は、容量性負荷がオペアンプ出力インピーダンスに相互作用し、オープン・ループ・ゲイン(Aol)応答で新たなポールを形成し、ループゲイン(Aol*β)位相マージンを許容範囲以下に低下させるためです。

    ビデオ「TI プレシジョン・ラボのオペアンプ安定性について」など、多くのリソースで、安定性に関する基本理論が詳細に解説されています。現在、容量性負荷を駆動中にオペアンプを安定化させる様々な補償回路が提供されています。今回は、自分で行うアンプ評価モジュール『DIYAMP- EVM』を使用して設計し、テスト可能な3つの一般的な補償回路についてお話しします。

    絶縁レジスタRISO
    最も一般的で容易な設計手法は、絶縁レジスタ…

  • 組込みプロセッシング: FRAMかフラッシュか:アプリケーションに最適なマイコンの選び方

    自社のアプリケーションでマイコン(MCU、マイクロコントローラ)を使用する際、フラッシュまたはFRAM(強誘電体メモリ)のいずれかを選択する必要があります。FRAMとはどのようなもので、それが有用な機能なのか、疑問に思う人もいるでしょう。FRAMは、フラッシュなどの従来のテクノロジに比べて、高速な書き込み速度、統合メモリ、低消費電力の書き込み、事前消去の不要など、複数の優位性を備えています。これらの優位性は、低消費電力が求められるアプリケーションにおいて、ただちに実際の機能レベルでの利点となります。

    OTA(Over The Air)アップデートなど、屋外でファームウェア・アップデートが必要なアプリケーションについて考えてみましょう。例えば、SPI(シリアル・ペリフェラル・インタフェース)を介して、4KBのファームウェア・イメージをメモリに転送する必要があり、フラッシュまたはFRAM搭載デバイスのどちらを使用するか、社内で話し合っているとします…

  • DLP®︎ テクノロジ: あらゆる場所で大型スクリーン体験を実現するモバイル・スマートTV

    お気に入りのテレビ番組や映画、スポーツを鑑賞する際、画面が大きい方がより楽しめることでしょう。手頃な価格の大画面テレビが常に高品質化していることは喜ばしいことですが、大型テレビによって、壁のスペースや部屋の大きさ、美観を損ねるようなことは遺憾です。その課題を解決するのが、大型スクリーン体験をスタイリッシュでポータブルなパッケージで提供する新しいディスプレイ・ソリューション「モバイル・スマートTV」です。

    外出先での映画鑑賞や、どこにいてもコンテンツをストリーミングできるようなシーンを想像してみてください。モバイル・スマートTVはすぐにセットアップが可能で、色々な壁面に映像を投影し、デバイスと投影面の距離に応じて投影画面の大きさを拡大することができます。このように、どこでも簡単に使用できるデバイスが1台あれば、部屋の壁をスクリーンにしたり、人気のゲームをガレージの扉に投影して楽しんだり、裏庭でガーデン・シアターを開催したり、キャンプ場に持っていくこともできます…

  • 電源 IC: 電源設計のヒント: 車載システム向けのUSB Power Deliverについて

    新しいUSB Type-C™ 標準規格の最も優れた特長の一つに、Power Delivery(PD、電力供給)があります。USB Power Deliveryを使うことで、ケーブルに接続された各デバイスがより多くの電力を求めるネゴシエーションを行うことができ、これまで不可能だった新しい機能が可能になります。携帯、タブレットやラップトップPCなどのポータブル機器の充電を短時間で完了できます。モニタのような、より高い消費電力の機器への電力とデータも、1本のケーブルで供給できます。

    USB Type-Cに対応するデバイスとホストの数は、まだ比較的少ない現状ですが、採用の動きは拡大しています。対応デバイスの数が増加するにつれて、消費者は家庭内や外出先、特に車内で使いたいと考えるようになるでしょう。

    車載システムでのUSB Power Deliveryには特有の要件があり、その要件を上回る設計上の困難が伴います。表 1に車載システムで発生する代表的な電圧を示します…

  • 電源 IC: シェアリング自転車の電子錠を太陽光で充電

    世界各国の大都市では数年前から「自転車シェアリング」構想が始まっています。都市の様々な場所に設置されたドッキング・ステーションで、クレジットカードを使用して自転車を借りて、返却することができます。料金は自転車を借りた時間に応じて課金されます。

    例えば、ロンドンでは、図1にあるようなドッキング・ステーション・キオスクでシェアリング自転車をレンタルし、同じ場所に返却します。これは、自転車で街中を周り、元の場所に戻る人には便利なサービスですが、近くにドッキング・ステーションがない日々の通勤者にとって利便性は決してよくありません。通勤者は地下鉄駅やバス停から仕事場までの最後の道のりをどのように通勤すればよいのかということに頭を悩ませています。例えば一日中自転車を借りるのか、最後の長い道のりを歩くのか、それとも比較的短い距離でもタクシーを使うのか・・・。もし自転車のレンタルと返却場所に制約がなければ、どれほど便利で効率的でしょうか。

  • 電源 IC: デバイスの充電方法を変容させるTIの降昇圧型バッテリ充電IC

    現在、各市場では、USB Type-C™ とUSB Power Delivery (PD)ポートを備えたエレクトロニクス製品が増加してきています。これらには、携帯、ノートブックPC、パワー・バンクからドローン、電動工具、スマート・ホームやポータブル・アプリケーションまで、多様な製品があります。USB PD標準規格はネゴシエーション動作の後に高電力の伝送が可能ですが、そのポートの背後に接続された充電ICには、新たな要件が課されます。

    一方で、デバイス(機器側)としては、バッテリの充電とシステムへの電源供給のために、ホスト(電源供給)側から供給される5V~20Vの最高電圧と電流についてネゴシエーションを行う能力が求められます。他方では、ホストとして、バッテリからの5V~20Vの最大電圧と電流を、OTG(on-the-go)方向のペリフェラル・デバイスに供給する能力が求められます。

    単一セルまたは複数セルのLi-Ion(リチウムイオン…

  • 電源 IC: LDOの基本:ノイズ – 第1部

     LDOの基本に関する別のブログ記事では、低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)を使用し、スイッチング電源から発生するリップル電圧をフィルタ処理する方法について説明しました。しかし、クリーンなDC電源を実現するための条件は、これだけではありません。LDOは電子機器なので、それ自体から一定量のノイズが発生します。システムの性能を犠牲にすることのないクリーンな電源レールを作り出すには、低ノイズのLDOを選択し、内部ノイズの低減措置を講じることが不可欠です。

    ノイズの特定

    理想的なLDOとは、AC成分を持たない電圧レールを生成するLDOです。しかし、残念ながらLDOからは、他の電子機器と同様に独自のノイズが発生します。図1は、このノイズがどのように時間ドメイン上に現れるかを示したものです。

    図1:ノイズの多い電源のオシロスコープ画像

    時間ドメインでの分析は困難です。そのため、ノイズの主な分析方法としては、周波数ごとに調べる方法と、積分値として調べる方法の2つが挙げられます…

  • 電源 IC: LDOの基本:電流制限

    DC電力管理の最終目標は、システム内に数多く存在する電子機器に、レギュレートされた安定した電圧を供給することです。この点で特に重要になるのが、必要に応じて電流を供給しながら電圧をレギュレートできる低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)です。

    外的条件やシナリオによっては、LDOから予想外に大きな電流が流れる場合があります。このような大電流が、給電されている他の電子機器に供給された場合は、供給元の電力管理回路だけでなく、大部分の電子システムにも悪影響が及ぶことになります。短絡保護や電流制限機能を備えたLDOを選択することで、このような悪影響を防止することができ、電力管理全体を設計する際に追加の保護機能として利用できます。

    電流制限とその仕組み

    LDOの電流制限は、供給される電流の上限を設定することにより定義されます。定電流源とは異なり、LDOは要求に応じて電流を供給しますが、レギュレートできる合計電力を制御することもできます。電流制限は…

  • 電源 IC: LDOの基本:ドロップアウト

    低ドロップアウト(LDO)リニア電圧レギュレータの本質的特性は、その名前や略語の元になっていることからも明らかなように、“ドロップアウト”です。

    最も基本的なレベルでのドロップアウトとは、適切なレギュレーションに必要とされるVINとVOUTの間の最小電圧差のことです。しかし、これに変動要素を組み合わせると、微妙に意味の異なるものになります。ドロップアウトは、効率的な動作を実現し、制限のあるヘッドルームで電圧レールを生成するためには不可欠なものであり、ここではその仕組みを説明していきます。

    ドロップアウトとは

    ドロップアウト電圧VDOは、適切なレギュレーションを行うために、入力電圧VINが、必要な出力電圧VOUT(nom)に対して上回っていなければならない最小電圧差を表しています。次の式1を参照してください。

                     (1)

    VINがこの値を下回るまで低下した場合、リニア・レギュレータはドロップアウト動作に切り替わり…

  • 電源 IC: LDOの基本:電源除去比

    低ドロップアウト・リニア・レギュレータ(LDO)の最大の利点の1つとされているのが、スイッチング電源から発生する電圧リップルを減衰させることができるという点です。この点は、データ・コンバータ、フェーズロック・ループ(PLL)、クロックなど、ノイズの多い電源電圧により性能が低下する可能性のある信号コンディショニング・デバイスにおいては特に重要となります。TIのXavier Ramusによるブログ記事、『Reducing high-speed signal chain power supply issues』では、信号コンディショニング・デバイスにおけるノイズの悪影響について取り上げています。しかし、電源除去比(PSRR)は、一般にはまだ単一の、静的な値と誤解されています。この記事では、PSRRとは何なのかという点と、PSRRに影響する変動要素について説明していきます。

    PSRRとは

    PSRRは、数多くのLDOデータ・シートに記載されている共通仕様です…

  • オートモーティブ: 大音量を楽しめるインフォテインメント・システム向け700W車載オーディオ・アンプ

    クルマの運転中に大音量で音楽を楽しみたい、というドライバーは数多くいることでしょう。図1の『700W車載用Class-Dオーディオ・アンプ』リファレンス・デザインは、最大700WのRMS電圧をサポートし、車内で大音量で音楽を聴きたい人のニーズを満たせる十分な電力を提供します。

    図1:テスト済みの車載オーディオ・アンプ・システム

    このデザインの主電源は、マスタ・スレーブ方式の2つの『LM 25122-Q1』昇圧コントローラを備えた二相交互同期昇圧コンバータで構成されています。この回路は、2つの『TPA 3251』350W高性能Class-Dアンプを提供します。この昇圧コンバータは9Vから12Vの入力電圧範囲を持ち、最大20Aの負荷電流で36Vの出力電圧を生成します。最小6Vの入力電圧でも動作しますが、その際の出力電圧は約半分に抑えられます。

    TPA 3251』アンプ段の一つは、車内の左右に搭載されたスピーカーに信号を送り、チャネルあたりの最大出力は175W…

  • オートモーティブ: デジタル・コックピットへの道のり

    ナビゲーションやインフォテインメント・システムが導入される前の自動車は、A地点からB地点に行くのに自分の記憶を頼りにせざるを得ず、車内のエンターテインメントといえばAM/FMラジオしかありませんでした。ダッシュボードには、走行速度を示す速度計と、ガソリンの残量を示す燃料計ぐらいしか計器類は備わっていませんでした。

    過去から今日まで話を進めると、私たちのライフスタイルにおいてインターネット接続がますます進み、クルマのエンジンをかけたらすぐにネットに接続できるようなシステムを完備できるよう、自動車メーカーも昼夜取り組んでいます。

    図1:典型的なデジタル・コックピット応用例

    最新の自動車のデジタル・コックピットではすでに、この技術の影響の大きさを垣間見ることができます。(図1)

    ・中央の高精細ディスプレイに表示される、3Dナビゲーション及びマルチメディア・システムを備えたインフォテインメント・システム

    ・統合周辺ビューおよびドライバー…

  • DLP®︎ テクノロジ: 迅速な設計を可能にする、DLPテクノロジの活用方法

    学生から教育関係者、エンジニアにいたるまで、皆がTIのDLP®テクノロジについて理解を深め、実際にテクノロジを活用して設計を開始するにはどのような支援ができるでしょうか。これまでにも様々な方面で、ユーザの方々から「ディスプレイをどのように開発したらよいか?」あるいは「分光法のようなセンシング・アプリケーション向けの調光をどのように活用すればよいか?」といった質問を受けており、TIは、お客様のアイデアを具現化できるサポートを用意してきました。

    図:オンとオフ状態のピクセル

    学生から開発者の方々まで幅広くDLPテクノロジの活用方法を理解いただくために、TIのウェブサイト(TI.com)上にTIソリューションを使用して設計を開始する方法を専門的に扱うセクションを設けています。このセクションでは、DLPテクノロジの概要や機能、その技術が自宅で最新映画を投影するだけでなく、それ以外にも重要な役割を担うことを紹介しています。また、…

  • 組込みプロセッシング: 超低消費電力MCUによるスマート・センシング – 第5部:スマート・マイク

    このスマート・センシング・シリーズの第5回では、現在民生用として利用されているGoogle HomeやAmazon Echoなどの一般的な家庭用自動化製品においても見られる、ユーザー・インターフェイスの新たなトレンド、スマート・マイクについて説明します。

    スマート・マイクとは、人間の声からコマンド情報を抽出するために、従来のマイクに超低消費電力のデジタル信号処理テクノロジを組み込んだデバイスです。少数のコマンドだけで操作できるアプリケーションの場合は、メイン・システムのウェイクアップやサーバーへの接続を行わずに、スマート・マイク内のデジタル信号処理機能ですべての演算処理をローカルに実行することができます。この機能は、スマート家電/機器、テレビ、ロボットなどのデジタル・アシスタントの音声インターフェイスと連動する鍵となる機能であり、民生用と産業用、両方のアプリケーションに対応しています。

    では、スマート・マイクはどのような仕組みで動作するのでしょうか…

  • 組込みプロセッシング: 超低消費電力MCUによるスマート・センシング – 第4部:ホルター・モニタ

    このスマート・センシング・シリーズの第4回では、ホルター・モニタの動作原理と実装について説明します。

    心電図(ECG)は、心臓の電気的活動と、臨床診断に使用される既知の生体信号をグラフ形式で記録します。ECGセンサは、一定期間にわたり、心拍ごとの電気的活動における小さな変化を検出します。ECGによる測定では、心拍の規則性に基づく、心臓の機能についての貴重な洞察が得られます。図1は、人間の心臓の解剖学的構造と、ECG信号の心拍波形を示しています。図2は、5秒の時間間隔でのECG波形を示しています。

    図1:心臓の解剖学的構造と心拍のECGパルス

     図2:5秒間のECG波形

    ホルター・モニタは、患者が装着して利用できるポータブルECG記録デバイスです。このデバイスは、医師による短時間の外来診療では診断を下すことができない症状のために、患者の心臓血管の活動を長時間(24時間以上)にわたって継続的に監視します。1950年代にHolter…

  • 組込みプロセッシング: 超低消費電力MCUによるスマート・センシング – 第3部:状態監視における超音波センシング

    このスマート・センシング・シリーズの第3回では、状態監視における超音波テクノロジの利用について説明します。

    状態監視は、予知保全や先行保全の主な構成要素となっています。状態監視とは、機器の動作における重要な変化を検出することにより、機械または電気システムの動作状態を監視し、障害の発生を防止するプロセスです。状態監視を行うことで、機器の耐用年数を縮めてしまうような状態に対処できます。

    状態監視の手法にはさまざまなものがあり、広く利用されているのが超音波テクノロジです。超音波センサは、通常は20kHz~100kHzの周波数範囲に含まれる音圧波を検出します。この周波数範囲内の音波は、さまざまな"不具合症状"から発生します。不具合症状は、注油不足による摩擦の増大などの単純な症状の場合もあれば、ベアリング・レースに対する回転体のこすれや滑り、機械的ひびや劣化した潤滑油によって引き起こされる衝撃などの場合もあります。高速および低速の機械式アプリケーションにおける摩擦や…

  • 組込みプロセッシング: 超低消費電力MCUによるスマート・センシング – 第2部:スマート障害インジケータ

    前回はスマート・センシングについて、ガラス破損検出器との関連で説明しましたが、このシリーズの第2部では、別の種類のアプリケーション、障害インジケータについて説明します。

    障害インジケータは、配電ネットワークの架空送電線や地下ケーブルにおいて、障害状態を検出および通知するために広く利用されているデバイスです。架空送電線に取り付けられている障害インジケータの下部には、発光ダイオード(LED)があります。過電流状態が検出されるとLEDが点灯し、離れた位置から障害を視認できるようになるため、現場スタッフが障害箇所を特定できます。

    適切に実装すれば、障害インジケータによってネットワーク上の障害部分についての情報が得られるため、運用コストや停電の発生頻度の削減につながります。さらに、このデバイスを利用することで、危険な障害診断を行う必要性が低下するため、安全性が向上し、機器の損傷が少なくなります。障害インジケータは、その設置場所から主にバッテリ駆動であり…