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ファクトリ・オートメーションやスマート・カーの発展には、高度なネットワーク化機能、リアルタイム処理、エッジでの分析、モータ制御トポロジの進歩が必要です。これらの例は、従来のマイコンより優れ、プロセッサのような能力を発揮できる高性能マイコン(MCU)の需要が急速に高まっていることを示しています。本記事では、現在および未来のシステム課題に取り組む設計エンジニアを助ける、高性能SitaraTm AM2xマイコンの5つの機能(図1)をご紹介します。

 1:高性能Sitara AM2xマイコンの長所

 

性能向上を実現

マイコンでは、近年、メモリ・サイズの増加、アナログ機能の統合、消費電力の低減が進んできました。しかし多くのアプリケーションでは、大容量のリアルタイム制御やセンサ・データを迅速に処理する能力もまた重要です。自動化された工場では、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)やロボット・モータ制御システムの処理要件が、コアあたり約100MHzから400MHz以上に増加しており、今後3~5年の間に1GHzを超える可能性もあります。

また、マイコンに高い性能能力が必要なのは、次のような機能を扱うためです。

  • 機械と中央システムがさまざまプロトコルで大容量データを共有することから増加した産業用通信
  • 工場の円滑な運営を維持する予知保全のためのエッジでの分析

Sitara AM2xマイコンは、各MCUコアのクロック・スピードを上げ、複数のMCUコアを同じチップに集積することで、高性能の要求に応えます。『AM2434』では、4つのコアがそれぞれ800MHzで動作することで、従来型のマイコンを使用したときよりも高速で複雑なデータ処理、より低レイテンシの制御、および工場フロアでの高速通信を実現します。例えば、ロボット・アームをより速くスムーズに制御できると、操作安全性や、生産効率、品質、処理能力が向上すると考えられます。

ホワイト・ペーパーをご覧ください。

SitaraTm AM2xマイコンによりリアルタイム制御、ネットワーキング、分析の性能が劇的に向上』(英語)

リアルタイム操作と分析を改善

最新の工場で自動化がさらに進む中、リアルタイムのデータ分析や制御の必要性が増しています。従来からのシステムの多くは、複数のマイコンを使ってこのようなさまざまな機能を処理します。一方で高性能マイコン、中でもマルチコア・アーキテクチャのマイコンは、1つのデバイスでデータ処理とリアルタイム制御の機能を管理して、システム統合をさらに推し進めます。

Sitara AM2xマイコンは、高速なデータ取得機能と精密なリアルタイム制御ペリフェラルを組み込み、データを高速で入力・処理します。ロボット・アームのモータを制御する1つのマイコンに、音声、電流、位置を感知するインターフェイスも統合されることで、マイコンをいくつも使わなくてもロボットと人間がより安全に協働できるようになります。あるいは、1つのマイコンに音声入力と音声の認識および分類が統合されると、建物のセキュリティ・システムのエッジ・インテリジェンスが高くなります。  シングル・チップで多重処理が行えるようになることで、高性能マイコンにより工場システムがよりスマートになるだけではなく、設計も簡単で費用的にも無理がなくなるでしょう。

 

設計の簡素化とソフトウェアの再利用を実現

マイコンをよく表す特徴に、システム設計とソフトウェア開発がシンプルなことがあげられます。マイコンの性能と統合レベルがプロセッサに近づいても、使い勝手の良いハードウェアとソフトウェアを求める声は依然として存在します。

Sitara AM2xマイコンを使用すると、エンジニアはさらに次のものを利用できます。

  • シンプルなソフトウェア開発環境とツール類(例えばリアルタイム・オペレーティング・システムをベースとしたソフトウェア)。プラットフォームが変わっても再利用できるため、開発期間の短縮とコストの削減が可能
  • リアルタイム・タスクの効率的な管理と、パワー・マネジメント・ソリューションの費用対効果向上のための簡素化された電力管理アーキテクチャ
  • ランダム・アクセス・メモリ(RAM)を統合した結果、最適化されたスピードと低レイテンシ機能

PLCなどのリアルタイムで感知し反応するアプリケーションは、安全で継続的に運用するためのタイミングの制約に対処しなければなりません。つまり、ワーストケースのタイミングに対してシステムを設計する必要があります。使い勝手の良いソフトウェアが用意されているので、このようなシステムを短期間で効率的に設計できます。

 

柔軟なメモリ利用によりシステム・コストを最適化

従来型のマイコンには、フラッシュ・メモリなどの不揮発性メモリがオンボード搭載されています。しかし、自動化工場から自動運転までに及ぶさまざまな用途でデータ処理要件が増大し、メモリ・サイズの拡張性という課題が生じています。それに加えて、CPUの高速化の要求による、次の2つの課題もあります。

  • 特にメモリへのリアルタイムの書き込みが必要なシステムの場合、フラッシュ・メモリの処理速度と性能に完全に依存する
  • 16nmといった先進的プロセス・ノードは、不揮発性メモリ非対応に限定される

マイコン設計エンジニアにとっては、外付け不揮発性メモリ・アーキテクチャの柔軟性が役に立ちます。Sitara AM2xマイコンを使用すると、マイコンの変更や基板の再設計をすることなくメモリ要求量の増加に対応することができるので、取り回しの良い設計になり、開発コストも抑えられます。AM2xデバイスは、大容量のオンボードRAMがありソフトウェア・アーキテクチャがシンプルなので、外付けメモリにまつわるレイテンシや性能の問題にも対処できます。

 

電力効率を増強

従来型のマイコンは、消費電力が低いことでよく知られています。アプリケーションが高性能マイコンへと移行しても、電力消費量の削減は依然として重要です。電力効率は、設計者にとって重要な次の2つの形で表現されます。

  • ワットあたりの性能(アクティブ電力消費効率)
    2W~3Wを超えて放熱量が増加すると、従来型のマイコン・システムではコストや重量、フットプリントの問題が起きやすくなりますが、特にヒート・シンクやファンなどのアクティブ冷却方式が必要なシステムで顕著です。このため、性能向上に比例して電力消費量が増加することは望ましくありません。高性能Sitara AM2xマイコンは、5,000DMIPS/Wを超える性能に対応できます。
  • 低電力(パワーダウン)モード
    マイコンは通常、デューティ・サイクルが低い環境で動作します。高性能マイコンが先進的プロセス・ノードで設計されることを考えると、リーク電流の影響は従来型のマイコンに比べて大きくなります。設計者は、パワー・ゲーティング技術や低電力モード(スリーブ、ディープ・スリーブ、シャットダウン、リアルタイム・クロックのみ、入力/出力ウェイクアップ)を刷新する努力を続ける必要があります。

 

まとめ

高性能マイコンにより、プロセッサ・レベルの演算処理が利用しやすくなり、設計者やシステムにとって新たな扉が開かれます。アプリケーションが進化を続け、設計エンジニアが自分たちのシステムで高性能マイコンの能力を最大限に活用することで、マイコン開発者、プロダクト・デザイナー、一般ユーザーのすべてが、新たに発見される機能の恩恵を受けられるようになるでしょう。

参考情報:
TMDS243GPEVM評価モジュール
MCU+ Academy(英語)


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上記の記事はこちらの技術記事(2021年7月11日)より翻訳転載されました。 
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