車載デュアル・バッテリ・システムの48V レールと12Vレールを相互接続

主としてCO2(二酸化炭素)排出削減に関する政府の規制によって、自動車業界の電子化がこれまでになく急速に進んでいます。欧州連合は、2020年には新型車両のCO2排出を95g/kmまで削減する目標を掲げており、中国ほかの国々も、同様の規制を制定しつつあります。自動車メーカ各社は、これらの標準規格に適合するため、通常の12V車載バッテリに、二次の高電圧バッテリを追加したマイルド・ハイブリッド電気自動車 に移行しつつあります。

既に、ドイツの複数の自動車メーカは48Vバッテリを中心としたシステムの定義や構築を開始しています。48Vバッテリは、普通の12Vバッテリよりも低い電流で高電力を供給でき、性能を低下させずに配線ハーネスを軽量化できます。この開発から、車載デュアル・バッテリ・システムの優勢な開始点としてLV 148標準規格が制定されました。デュアル・バッテリ・システムの最上位レベルのブロックの例を図1に示します。 

図1: 車載デュアル・バッテリ・システムのブロック図

ここに提案されたシステムの問題点は何でしょう。それらをどのように解決しますか。多くのOEMシステムの要件では、48Vレールと12Vレールの間での双方向のエネルギー伝送を規定しています。双方向の電力伝送は、片方のバッテリが放電した場合の充電や、片方の電圧レールが過負荷状態になったときに反対側のレールから余剰電力を供給する場合に必要になります。バッテリを損傷させずに充電するため、コントローラは充電電流を非常に高い精度で制御する必要があります。ほとんどの車載アプリケーションでは、伝送される電力は高く、通常、2kW~3kWの範囲になります。両方のレールの電圧は大幅に変動します。LV 148標準規格の仕様によれば、48Vレールの電圧範囲は36V~52V、12Vレールは6V~16Vと規定されています。システムに損傷を与えると考えられる、あらゆる故障状態に対応した保護回路の設置も必要です。これらの要件から考えても、48Vと12Vのレール間の橋渡しに必要なDC/DCコンバータ回路は、小さな設計プロジェクトでは開発できないことが明らかです。

48Vと12Vのレールの電圧範囲は重複しないことから、設計を大幅に簡素化できます。48Vレールから12Vレールへの電力伝送のためには降圧型コンバータが使え、逆に、12Vレールから48Vレールへの伝送には昇圧型コンバータが使えます。kWクラスの電力要件であることから、システムの電力変換効率を向上するため、各コンバータではフリーホイール・ダイオードの代わりに同期整流MOSFETを使うことが必要です。

これらの降圧型と昇圧型のトポロジはパワー・エレクトロニクスでは良く知られていますが、2種類のコンバータを個別に構成すると貴重な基板実装面積が消費され、システムが複雑化するとともに、コストが上昇します。両方のトポロジを注意して眺めると、これらのパワートレインは良く似ていることがわかります。コントローラは異なりますが、両方のトポロジとも、少なくとも2本のパワーMOSFET、1本のインダクタと、いくらかの容量の出力コンデンサで構成されています。降圧トポロジでは、制御されるスイッチはハイサイド(高電圧側)のMOSFETであり、昇圧トポロジではローサイド(低圧側)のMOSFETです。適切なコントローラを使い、制御されるスイッチを単純に入れ替えるだけで、同じパワートレインの構成部品を使って、インダクタに流れる電流の向きを逆転できます。図2に、2種類のコンバータ・ソリューションから単一のコンバータ・ソリューションへの進化の様子を示します。 

図 2: 単一の双方向コンバータへの進化

高電流回路の設計には同期スイッチング手法が必要ですが、それですべての問題を解決できるわけではありません。2kWの電力では、12Vレールにおよそ166Aの電流を流さなければなりません。これだけでも、この回路を実際に実現するためにマルチフェーズ動作が必要であることがわかるでしょう。マルチフェーズ・アーキテクチャを使うことで、各部品の物理的なサイズを縮小できるほか、熱管理も容易になります。各電力相を簡単に並列動作させるためには、降圧と昇圧の各モードの動作は、電流モード制御でなければなりません。マルチフェーズ動作によって、各相のインターリーブ・スイッチングも可能になります。各相を交互にスイッチングすることで、出力リップルを低減でき、このことはEMI(電磁干渉)の低減にも役立ちます。

すべてのシステムで、人体の安全を確保するために保護回路を設計する必要もあります。UVLO(電圧低下ロックアウト)、OVP(過電圧保護)をはじめとした主要な保護機能は、バッテリの過放電や過充電を確実に防止します。インダクタのピーク電流制限は、各電力相の過剰ストレスやインダクタの磁気飽和の防止に役立ちます。車載のデュアル・バッテリの構成では、48Vや12Vのレールと負荷との間のあらゆる電気接続を遮断するために、サーキット・ブレーカも必要です。各回路をモニタすることも、安全機能の強化に役立ちます。例えば、エネルギーの伝送中に各チャネルの電流をモニタすることは、故障状態の発生の検出や、故障の予測に役立ちます。

デジタル制御のDC/DCコンバータは選択可能なソリューションの一つですが、いくつかの欠点もあります。第一に、各相の電流センス・アンプ、パワーMOSFETのゲート・ドライブ・アンプ、保護回路やモニタ回路など、多くのディスクリート部品が必要です。それぞれの部品が、貴重なプリント基板の実装面積を消費してしまいます。第二に、コンバータの電流と電圧の制御ループを実装するために、ハイエンドのマイコンが必要です。第三に、マイコンは保護回路の動作遅延を発生し、このために高電力レベルでは壊滅的な損傷が発生するおそれがあります。第四に、デジタル制御の設計サイクルは数年に達することがあります。設計者には、スイッチング電源とデジタル制御の両方に関する深い知識が必要です。それでも、デジタル制御にはいくつかの利点があると言われています。システムレベルでは、デジタル制御はより高い柔軟性を提供し、各制御手法のパラメータや安定化電圧のダイナミックな変更が可能です。また、他のサブシステムとの間での情報共有によって、総合的なシステム性能を向上できます。

TIの『LM5170-Q1』同期整流デュアル・フェーズ双方向降圧/昇圧コントローラは、これらの問題の多くを解決します。複数の電流センス・アンプや高電流ゲート・ドライバのほか、内蔵のサーキット・ブレーカやチャネル電流モニタをはじめとしたシステム保護機能を集積し、デジタル・ソリューションに必要な、数多くのディスクリート部品を不要にします。複数のコントローラを積み重ねて並列接続することで、『LM5170-Q1』に集積されたTI占有の平均電流モード制御手法を通して、数kWの電力供給を可能にするとともに、各バッテリの洗練された電流充電制御が可能になります。TIの平均電流モード制御手法と普通の制御手法の比較については、“双方向コンバータによる制御手法の選択” ブログ記事をご覧ください。48Vと12Vの2種類のバッテリを橋渡しするシステムの設計は複雑ですが、一歩ずつ進めれば必ず可能です。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/behind_the_wheel/archive/2017/03/20/how-to-connect-dual-automotive-battery-systems

*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。