Recent Technical Articles
  • 電源 IC: DC/DCコンバータの出力に電圧を加えることはできますか?

    TI E2E™コミュニティの非絶縁型DC/DCフォーラムでよく受ける質問に、「コンバータに入力電圧が印加されていない場合、DC/DCコンバータの出力側に電圧を加えることができますか?」というものがあります。そういったケースは、製造工程でプロセッサやマイコン(MCU)をプログラミングする場合によくあります。そのような場合、AC電源やバッテリーからシステムの入力電圧は通常与えられません。単に、プログラミング用にマイコンに給電するだけの目的で、出力側に外部電圧が印加されます。図1に、一般的なビル・オートメーション・システムのブロック図を示します。

    図1:プログラミングされるMCUのブロック図

    降圧型コンバータの出力側に電圧を加えるのは、明らかに通常のアプリケーションの使い方ではありません。ですので、慎重な検討の上で行うことが必要です。電圧の印加中は、デバイスとアプリケーションの安全が維持されなければならず、また、それらが期待どおりに機能するとは限りません…

  • 電源 IC: 昇降圧型反転コンバータで成功する基板レイアウト

    DC/DCコンバータ分野では、LM 5017ファミリのような降圧型コンバータや降圧型レギュレータにおいて、正極性の入力電圧VINから、負極性の出力電圧VOUTを作ることができることは、良く知られています。一見、昇降圧型反転コンバータの回路は降圧型コンバータと同じICを使っているように見えますが、実際には異なります (図 1a と 図1c)。これらの回路には、電圧レベル、電流レベル、スイッチング電流経路やプリント基板レイアウトなどで重要な違いがあります。

    前のブログ記事ではVIN 範囲、VOUT 範囲や利用可能な出力電流IOUT maxなどの異なる点について説明しました。プリント基板レイアウトの違いは、昇降圧型反転コンバータと、通常の降圧型コンバータのスイッチング電流の電流経路の違いに由来するもので、これも重要でありながら、十分に理解されていません。

    図1は、昇降圧型インバーティング・コンバータと、通常の降圧型コンバータのスイッチング電流の電流経路の違いを示しています…

  • 組込みプロセッシング: スペース制約のある組み込みアプリケーションにより多くの性能を詰め込む方法

    センサのアプリケーションは、物理的にますます小型化してきています。工場内で見えないよう設置するのに必要な産業用リモート・センサ(図1)や、次世代のスマート・ウェアラブル・デバイス向けのセンサを設計する場合でも、リソースとしてのスペースは不足してきています。

    一方、マイコンやシステム・レベルでのローカルな集積化やプロセシング技術に対する需要は増えています。ラックやテスト・ベンチから複数のノードに直接つなげて、非局在化された測定を行う場合に、局在的な解析をサポートする先進的なプロセシング能力と結び付けると、リモート・ノードは、よりタイムリーに詳細な情報を得た上での判断を行うことができます。これにより、通信の遅延をできるだけ小さくし、通信リンクの途切れを和らげます。

    より小型化/高集積化することは、どちらも魅力的ですが、互いにうまく作用するとは限りません。組込みアプリケーションの開発者は、物理的にも演算上でもこれらの制約にピッタリ合致した製品を見つけることが重荷になっています…

  • 組込みプロセッシング: 多数のコネクテッド製品と接続規格、1つのプラットフォームによる産業用IoTの変革

    ネットワーク接続された未来の工場を想像してみてください。回転するモーターやあちこち動き回るロボット・アーム、電気を供給すると、うなりを上げて振動する機器の動作でにぎやかな工場になっていることでしょう。そこでは、見渡す限りすべてのものが電子的に接続されています。これが産業用IoT(IIoT:Industrial Internet of Things)の未来像です。

    それぞれの機器とクラウド内のリモート・サーバーの間で大量のデータが継続的に交換され、発生する振動やノイズから、放射される熱や湿気まで、各機器のデジタル"鏡像"とその状態が伝えられます。クラウドでは、各機器の"通常状態"を把握するためにデータ分析が適用され、何らかの異常が発生した場合はリモートでオペレータへの警告が行われます。

    産業用IoTの機器をつないでクラウドに情報を送るために必要な接続には、Sub-1GHz、Wi-Fi®ネットワーク…

  • 電源 IC: APECレポート:TIの革新的な産業用設計向け製品

    フロリダ州のタンパで毎年開催されるパワー・エレクトロニクスの展示会「APEC(Applied Power Electronics Conference)」は今年で32回目となります。この記事では今回TIが自社のブースで展示した、産業用��ステム�����の最新リファレンス・デザインについてご紹介します。

     APEC全体��傾向として、ここ10年ほどはシステム技術やサブシステムの設計の劇的な台頭と集中が目立つようになってきました。参加各社は、システム設計の専門知識をベースに、サブシステムレベルで、パワーICやテクノロジの素晴らしい組み合わせを使い、顧客の問題の解決に役立てています。技術者達は、アプリケーションを向上することを目的に、地球上で最新のトポロジと材料を活用した新しいアイディアを次々と考え出します。彼らは包括的なサブシステムレベルのリファレンス・デザインを構築して、世紀の変わり目の時点では不可能だった、高効率と高電力密度の目標を追求しています…

  • 産業機器: 2017年の技術革新を牽引する4つの技術トレンド

    電子化の波が高まり、エレクトロニクスは生活環境のあらゆる場面で利用されています。私たちを取り巻くあらゆるものが、より賢く、より多くつながるようになることは、すなわち、世の中にいかに多くの半導体搭載製品が溢れているかを表しています。

    ビッグ・データはますます巨大化し、パーソナル・エレクトロニクスはますますパーソナル化し、スマート機器はよりスマート化しています。2017年には、次に述べる技術トレンドが技術革新の方向性を決めるであろうと考えています。これらのトレンドの中には、前年から持ち越されたものもありますが、2017年にも普及を続け、ますます重要な技術となっていくでしょう。

    1. 高電圧
     高電圧分野が成長している一つの理由は、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HEV)の普及です。多くの大手自動車メーカは、EVもHEVも積極的に開発しています。そしてクルマの駆動部や充電ステーションに対するニーズは、高電圧のパワー・エレクトロニクスの成長を加速するでしょう…

  • アナログ: 産業用システム設計向け電源内蔵の強化絶縁アイソレータ

    ファクトリ・オートメーションやグリッド・インフラストラクチャ向け機器をはじめとした産業用アプリケーションへの需要が高まるにつれて、システムへの機能追加のニーズも増加しています。これによって、電源管理システムには、装置の温度を上昇させずに多様な回路に電源を供給するという、より厳しい要件を課されるようになりました。

     過去のブログ記事で、システムの低電圧側と高電圧側の間でのアイソレータ製品の使用について説明しました。データ・アイソレータ製品を使うことで、信号絶縁機能を簡単に実現できますが、それだけでは十分ではなく、電源の絶縁も必要です。いくつかの例では、2種類の絶縁型電源を使って、アイソレータの1次側と2次側に電源を直接供給しています。しかし、その他のアプリケーション例では、2次側用の電源を利用できないこともあります。このような例では、絶縁障壁越しに1次側から2次側に絶縁電源を供給する必要があります。

     図1 に、ディスクリート部品を使った絶縁型電源ソリューションの例を示します…

  • オートモーティブ: 車載デュアル・バッテリ・システムの48V レールと12Vレールを相互接続

    主としてCO2(二酸化炭素)排出削減に関する政府の規制によって、自動車業界の電子化がこれまでになく急速に進んでいます。欧州連合は、2020年には新型車両のCO2排出を95g/kmまで削減する目標を掲げており、中国ほかの国々も、同様の規制を制定しつつあります。自動車メーカ各社は、これらの標準規格に適合するため、通常の12V車載バッテリに、二次の高電圧バッテリを追加したマイルド・ハイブリッド電気自動車 に移行しつつあります。

    既に、ドイツの複数の自動車メーカは48Vバッテリを中心としたシステムの定義や構築を開始しています。48Vバッテリは、普通の12Vバッテリよりも低い電流で高電力を供給でき、性能を低下させずに配線ハーネスを軽量化できます。この開発から、車載デュアル・バッテリ・システムの優勢な開始点としてLV 148標準規格が制定されました。デュアル・バッテリ・システムの最上位レベルのブロックの例を図1に示します。 

    図1: 車載デュアル…

  • オートモーティブ: 双方向コンバータによる制御手法の選択

    最近、マイルド・ハイブリッド電気自動車では、48Vと12Vのデュアル・バッテリ電源システムが一般的になってきました。自動車のダイナミックな動作条件では、これら2本のバッテリ・レール間で最大10kWの電力交換が必要になることもあります。走行中の自動車のあらゆる種類の動作シナリオに対応し、電力フローを双方向にリアルタイムで制御しなければならないため、動作はやや複雑になり、デジタル制御手法による知的な機能が必要です。このため、48V-12V双方向電力コンバータの開発を開始した主要な自動車メーカやTier 1サプライヤ各社の多くは、完全デジタル制御手法を採用しています。

    完全デジタル・ソリューションには、電流センス・アンプ、パワーMOSFETのゲート・ドライバ、モニタや保護のための回路など数多くのディスクリートのアナログ回路が必要であるため、高価になってしまいます。また、ディスクリート・ソリューションはプリント基板に多くの構成部品が実装されるため体積も大きくなり…

  • DLP®︎ テクノロジ: HUDの未来を推進するAR機能

    クルマ向けのHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)の技術は、今後数年で普及する大きな可能性を秘めています。調査会社HIS Automotiveの予測では、HUDを装備したクルマの世界販売台数は2012年の120万台から、2020年までには910万台に増加する見通しです。この中には、既存のクルマで使用するアフターマーケットのHUDソリューションの台数は含まれていません。

    開発者やOEMの方々は、次世代の統合型車載やアフターマーケット向けソリューションに、いつHUDを取り付けるべきかを考えることでしょう。視界(FOV)から画質に至るまで、開発者は、自社製品を市場投入するにあたり、多くの要素を考慮しなければなりません。

    車載用HUDの未来を推進する一つの重要な分野は、AR(拡張現実)です。ここでは、TIが考えるARの定義を説明します。誰もがその定義に同意しないかもしれませんが、ARがクルマのディスプレイの未来にどれほどの影響を及ぼすのかがすぐに分かります…

  • 組込みプロセッシング: Bluetooth low energy で広がるIoTの世界

    ステファン・リモージュ(Stephen Limoges), Texas Instruments

    はじめに

    過去10年間、組み込みデバイスはムーアの法則に従って急激な発展を遂げ、IoT(モノのインターネット)の展開を促進してきました。いずれハードウェアは共通化され、機能の差別化はソフトウェアで実現する日が来るでしょう。この変化によって、ソフトウェアを適応させるだけで別の用途に簡単に転用できる、柔軟なプラットフォームが可能になります。この記事で後述するように、民生用のリモコンと、進歩したインダストリ4.0ノードの違いはわずかです。インダストリ4.0とIoTは、デバイスを相互接続するか、またはクラウドに接続する、というコンセプトの上に構築されています。このコンセプトはワイヤレス通信によって実現され、そのためのソリューションの選択肢はたくさんあります。この記事では、最も発展した魅力的なワイヤレス・コネクティビティ・テクノロジであるBl…

  • 産業機器: スマート・ゲート・ドライブ・アーキテクチャとは何か(Part 2):TDRIVEについて

    このシリーズのPart 1では、ゲート・ドライブ電流をダイナミックに制御し、それによりMOSFETスルーレートを制御するIDRIVE機能を取り上げました。今回取り上げるテーマは、モーター・ドライブ・システムの堅牢性と効率を向上する内部ゲート・ドライブ・ステート・マシンのTDRIVEです。

    TDRIVEはMOSFETハンドシェーク・スキーム、ゲート・フォルト検知、dV/dtターンオン防止の3つの主要コンポーネントで構成されています。最初のコンポーネントであるMOSFETハンドシェーク・スキームは、スマート・ゲート・ドライブにより、不適切なデッドタイムを原因とするMOSFETのシュートスルー(すなわちクロス・コンダクション)の発生を防止します。ローサイドMOSFETがオフになったのと同時にハイサイドMOSFETがオンのコマンドを受け取った場合には、ターンオフとターンオン間の遅延のために両方のMOSFETがオンになる時間帯が生じる可能性があります…

  • 産業機器: スマート・ゲート・ドライブ・アーキテクチャとは何か(Part 1):IDRIVEについて

    制御、効率、保護・・・ 新しいICに関連してこうした用語を耳にしますが、これらは何を意味するのでしょうか?私はデバイスのすべてについては話すことはできませんが、テキサス・インスツルメンツがモーター・ゲート・ドライバとともに導入しようとしている新しい技術については語ることができます。ブラシ付きDC、ステッパ、ブラシレスDCモーター・アプリケーション向けのTIのモーター・ゲート・ドライバは、スマート・ゲート・ドライブと呼ばれる新しいアーキテクチャを採用しています。このブログ・シリーズでは、スマート・ゲート・ドライブとは何か、どのようなモーター・ゲート・ドライバに使用されているのかを解説するとともに、関連資料やツールについても紹介します。

    TIのスマート・ゲート・ドライブ・アーキテクチャは、IDRIVEとTDRIVEと呼ばれる2つの機能を通じて、保護機能とゲート・ドライブ設定機能を提供します。このブログ・シリーズでは、Part 1でIDRIVE…

  • 組込みプロセッシング: 新製品!SensorTagキットのファミリにWi-Fi®を追加!

    IoT(Internet of Things)クラウド・アプリケーションのデモンストレーションが、これまでにないほど簡単になりました。SimpleLink™ SensorTagファミリに新しく加わったSimpleLink Wi-Fi® CC 3200 SensorTagキットを使用すれば、より高速かつ簡単にクラウドへ接続できます。

     新発売のSimpleLink Wi-Fi SensorTagキットは、TIの低消費電力SimpleLink Wi-FiデバイスであるCC 3200を利用しています。これは、業界で初めてチップ・レベルでWi-Fi CERTIFIED™と認められたワイヤレス・マイコン(MCU)です。この低消費電力テクノロジーによって、SensorTagは単4電池のみで動作でき、バッテリー駆動アプリケーションの最適なデモ・プラットフォームとなります。

    TIの新しいWi-Fi SensorTagキットには…

  • オートモーティブ: ADAS/自動運転向けにスマート・センサの動作状態を監視するIC

    増加している車載用カメラ、レーダ、およびその他の高速センサ・モジュールのネットワークの動作状態を監視することは、ますます複雑になってきています。プロセッサを内蔵しているスマート・センサが自らの動作状態を管理できますが、ローデータ・センサはこの作業を実行するためのマイコンを内蔵していない場合が多いです。このため、中央電子制御ユニット(ECU)のプロセッサがすべてのセンサを個々に監視しなければならなくなります。

    しかし、ローデータ・センサをよりスマートにすることができます。スマート・ヘルス・モニタリング機能をSerDes(シリアライザとデシリアライザ)リンク・チップセットに集積すると、CPUが動作状態を知るためにセンサを常にポーリングする必要がなくなります。この記事では、その実装方法について紹介していきます。

    マルチセンサのADAS(先進運転支援システム)
     次世代のクルマは、ローデータを収集する10数個のリモート・センサを搭載すると思われます…

  • DLP®︎ テクノロジ: 3D検査でPCBの品質を改善する

    DLP®製品に携わってきた20年のうちに、DLPテクノロジを活用した幅広いアプリケーションが現れてきました。プリント回路基板(PCB)の製造と検査における2Dから3Dへの自動光学検査 (AOI)の移行も例外ではありません。民生用エレクトロニクスが小型化し続けることは、新しい機会をもたらし、3D AOI戦略のように検査方法を改善し、それが製造コストの節約につながります。AOI装置設計者は、DLPソリューションを活用して、PCBハンダ・ペーストやハンダ接合、正確な部品の配置をうまく検査するのに必要な堅固で高速・高分解能の3D画像システムを開発できることを知らないかもしれません。

    3D検査の必要性
    3D AOIおよびハンダ・ペースト検査(SPI)法は、アセンブリ工程の早い段階での欠陥の検出を支援します。最終検査と組み合わせれば、PCB製造工程の品質と信頼性をより低コストで確認することもできます。

    民生エレクトロニクスの小型化が進み続けるにつれ…

  • 電源 IC: IoT機器の電源設計について

    IoT(モノのインターネット)という言葉には、寿命を終えた電化製品を救う甘い響きがあります。一度消え去ったデバイスが今は見られ、一度は通信できなくなったものがまた通信できるようになります。電化製品はこれらの機能により、電話などの家電製品とシームレスに互いに繋がり動作するようになりますが、それは簡単なことではありません。多機能化は、より多くの電力を必要とするためで、すべての注目が新しい通信機能に注がれている中、IoT機器を完全に動作させるためには電源の設計を見直さなければなりません。

    残念ながら、IoTデバイスに電源を加えることは容易なことではありません。これらのデバイスの電源要件は、従来のものとは異なります。例えば、電気メータの消費電力は、かつては低かったので、設計者達はドロップ・コンデンサを利用したソリューションを使ってバイアス回路に電源を供給していました。IoTは通信技術と共にこの分野に入ってきたので、電気メータをスマートメータに合わせようとすると…

  • 電源 IC: パワー・モジュールのデータシートを読み解く – パート2

    パート1では、パワー・モジュールのデータシートの表紙の記載事項以外に、集積機能やソリューション・サイズに関した、総合的な情報を得ることが大切なことを説明しました。このパート2では、同様の問題として、パワー・モジュールの過渡応答特性と効率について説明します。

    過渡応答特性は、パワー・モジュールのデータシートの表紙に記載された箇条書きのうち、最も読み取ることが困難なものの一つです。このせいで、「超高速の過渡応答」というメーカーの宣伝文句が全く無意味になる危険性もあります。敏感なデジタル負荷では、超高速の過渡応答だけでは不十分です。モジュールの出力電圧のオーバーシュートやアンダーシュートはどれくらいか、そしてその回復時間はどれくらいか、も把握しておくことが大切です。実際のアプリケーションを、表1に示すようなテスト条件に近づけることができれば、実際のシステム内で、そのパワー・モジュールがどのように動作するかを簡単に評価できるようになるでしょう…

  • 電源 IC: パワー・モジュールのデータシートを読み解く – パート1

    私たちが理解していると思っている規格や条件でも、本当の意味で理解されていないものがあります。時間をかけてまで、小さな文字で書かれた注釈を読みますか? 他の重要な資料と同様に、データシートにも注釈があります。良さそうなことだけを書いてあるデータシートの1ページ目の仕様に続いて、20ページもの注釈が付いていることもあります。これは特に、パワー・モジュールに当てはまります。それは多くの機能を集積することで、デバイスの重要な詳細事項が隠されてしまうことがあるためです。データシートの表紙だけを読んで評価をすると失敗しやすいブロックが、いくつかあります。このブログのパート1と2では、この点を解説します。

    モジュールの機能がどのように集積されているか、を評価するのは困難を伴うことがあります。最も基本的なレベルでは、パワー・モジュールは1個のコンバータとインダクタを内蔵した小型の部品であり、本質的には、電源技術者が時間や手間をかけて構築する基板設計の一部を代替えしてくれるものです…

  • アナログ: USB充電器をType-AからType-Cへアップグレードする際の要件

    USB充電器はますます普及しており、汎用品になりつつあるようです。USBポートはコンピュータにしか付いていなかった頃から、壁などのコンセントやクルマのパネル、航空機の座席などで利用されるようになっています。

    従来のUSB Type-A充電器は、一つの電圧しか扱えませんでした。これでは、簡単な高位設計にしか役に立ちません。図1に簡単な回路図を示します。RFBL とRFBUで構成された抵抗分割回路は、閉ループで安定化した出力電圧をVBUSに印加します。この回路構成では、左のフライバック・コントローラが安全のため出力電流を制限します。

    図1 Type-A型コンセント向けの従来のUSB充電器の回路図

    USB Type-C™コネクタ上のUSBパワー・デリバリ(PD)はより大きな電力で充電することができますので、USB充電のエコシステムを一層広げることになります。しかし、USB PDとUSB Type-Cは新しい要件なので、図1の回路では十分ではありません…

  • アナログ: デルタ・シグマ変調器を使用した絶縁高電圧測定

    モーター駆動やパワー・インバータなど、多くのアプリケーションでは電流と電圧の絶縁測定が必要になります。TIの絶縁型デルタ・シグマ変調器は、電流検出向けに最適化されていますが、電圧測定でも高い性能を提供します。

    こうしたアプリケーションでは、抵抗分割器の選択時に忘れてはならない重要な点があります。

    例えば、パワー・インバータへの入力電圧のモニタが必要な場合を想定してみます。インバータへの最大入力電圧が390VACでリニア入力範囲が±250mVのデルタ・シグマ変調器(TIのAMC 1304AMC 1305など)を使用するケースを想定します。

    こうした電圧センシングの実装を検討する際に最初に思い浮かぶのが、図1に示すような回路です。

     図1:絶縁電圧モニタリングのための最初のラフなソリューション

    図1のRaとRbで構成される抵抗分割器に関しては式1の関係が成立します。

     式1

    ここで注意しなければならないのは、デルタ・シグマ変調器のリニア入力範囲を有効に利用するために…

  • アナログ: 16ビットD/Aコンバータを使って、18ビット D/Aコンバータの 伝達関数をコスト効率良く実現する手法

    近年、多数の高分解能の高精度D/Aコンバータ製品が、産業用テスト・計測機器に採用されるようになりました。設計者は総システム・コストを削減するため、しばしば、低分解能を余儀なくされることがあります。本稿では、まず1個の16ビットD/Aコンバータと2個のオペアンプを使って18ビットD/Aコンバータを構成する手法について解説します。その後、18ビット精度の出力が得られる2種類の回路トポロジを解析します。その一つは1チャネルの16ビットD/Aコンバータを、もう一つは4チャネルの16ビットD/Aコンバータを使います。最後に、両方のトポロジの一般的な動作理論について検証します。最後に、A/Dコンバータを統合したマイコンを活用することで、市場に供給されている最も高精度の18ビットD/Aコンバータの半分の価格で、低いDNL(微分非直線性)を可能にするとともに、伝達関数全体で単一増加性を保証するアルゴリズムについて説明します。

    コンセプト

    このデザインに関するハイレベルなアイディアは…

  • アナログ: SAR ADCの応答時間:インターフェイス・トポロジによる違い(Part 3)

    このシリーズのPart 2では、サンプルSの変換結果を、変換完了後でかつ次の変換の開始前にホスト・コントローラに伝送するシリアル・インターフェイスについて解説しました。また、このタイプのインターフェイスでは、低速クロックを使用した場合、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)のスループットと応答時間が遅くなることも指摘しました。

    インターフェイス・タイプ3:ADCが次のサンプル変換を行う時にデータ・ビットを伝送

    このタイプのADCでは、サンプルSの変換結果は、ADCがサンプルS+1の変換を行っている時にホスト・コントローラに伝送されます。

    図1はこのタイプのシリアル・インターフェイスを示します。(**クリックすると画像が拡大表示されます。)

     図1:タイプ3のシリアル・インターフェイス

    • tDTX = tCONV = n*tCLK
    • ŸtTHROUGHPUT = tCONV + tACQ(n*tCLK < tCONV 、つまり高速クロックの場合…
  • アナログ: SAR ADCの応答時間:インターフェイス・トポロジによる違い(Part 2)

    前稿では、各データ・ビットを分解し、伝送するシンプルなシリアル・インターフェイスについて解説しました。また、このタイプのインターフェイスの使用は通常、低分解能または低速のADCに限定されることも述べました。

    最新の高分解能(12ビット超)の逐次比較型(SAR)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)は、ほとんどの場合、冗長/エラー補正技術の採用により、特に高スループット・レートでのADCの性能を向上しています。こうしたADCでは、最終的な変換結果は、すべての変換処理の完了後にのみ得られます。

    インターフェイス・タイプ2:変換処理が完了次第、データ・ビットを伝送

    このタイプのADCは、サンプルSの変換処理が完了すると変換結果をホスト・コントローラに伝送し、その間に次のサンプルS+1を取りこみます。ホスト・コントローラは、サンプルSの変換結果を受けとってから初めて、サンプルS+1に対する変換開始(SOC)信号を発します。

    ADCとホスト…

  • アナログ: SAR ADCの応答時間:インターフェイス・トポロジによる違い(Part 1)

    本稿では、インターフェイス・トポロジが逐次比較型(SAR)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)のスループットと応答時間に与える影響について検討します。

    SAR ADCは一般的にアクイジションと変換の2つの動作フェーズで構成されており、次のように機能します。

    • Ÿアクイジション・フェーズでは、サンプル・ホールド・スイッチが閉じており、SAR ADCは外部アナログ入力をサンプリング・コンデンサに取り込みます。その後、ホスト・コントローラが変換開始(SOC)信号を発して、アクイジション・フェーズを終了させ、アナログ/デジタル変換の処理を開始します。
    • Ÿ変換フェーズでは、SAR ADCはサンプリングした、つまり取り込んだアナログ入力を、二分探索アルゴリズムを用いて等価のデジタル・コードに変換します。デジタル・データ出力はADCとホスト・コントローラの間でデジタル・インターフェイスを使用し、ホスト・コントローラに伝送されます。

    各用語の定義は次の通りです…