• ADC 精度 Part 3:ADC シグナルチェーンでの温度ドリフトの影響

    ADC 精度に関するブログ・シリーズの Part 1と Part 2 では、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)の分解能と精度の相違点と、ADC の総合未調整誤差(TUE)に影響を与える要因について説明しました。こうした誤差の大半は、周囲の条件下でキャリブレーションが可能な静的誤差です。しかし、多くのファクトリ・オートメーション/制御アプリケーションなどで一般的に見られる温度変化により、キャリブレーション後でもシステム性能ドリフトが続くことがあります。電子部品の経年劣化、湿度、圧力などの要因も、長期的な性能ドリフトに影響を与える可能性があります。

    以下の 3 つの主要な要素が、データ・アクイジション・システムの精度ドリフトに影響を及ぼします。

    • Ÿ   ADC オフセット・ドリフト
    • Ÿ   ADC ゲイン・ドリフト
    • Ÿ   電圧リファレンス・ドリフト

    内蔵の抵抗、コンデンサ、スイッチなどのアクティブなデバイス間のミスマッチが、ADC のオフセット…

  • ADC 精度 Part 2:総合未調整誤差(TUE)について

    このシリーズの Part 1 のブログでは、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)の分解能と精度の違いについて説明しました。今回は、ADC の総合精度に影響を与える総合未調整誤差(TUE)について掘り下げて解説します。

    ADC の TUE 仕様の中で「総合」が何を意味するかについて疑問が起こると思います。ADC のデータシート(例えば、オフセット電圧、ゲイン誤差、INL)のすべての DC 誤差仕様を単に足し上げたものなのでしょうか。あるいはそれ以上のものなのでしょうか。答えは、TUE は ADC の動作入力範囲に対する総システム誤差の比率を表したものです。

    より具体的に言うと、TUE は最下位ビット(LSB)の単位で表現される DC 誤差仕様で、ADC の実際の伝達関数と理想的な伝達関数間の最大偏差値を示します。この仕様値はいかなるシステム・レベルのキャリブレーションも行われていないことを想定しています。概念的には、TUE は…

  • ADC 精度 Part 1:精度と分解能の相違点は?

    アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)を使用するシステム設計者と話している際に最も多く聞かれるのが、 

    「16 ビット ADC は 16 ビットの精度があるのですか?」という質問です。

    この質問に対する答えは、分解能と精度の違いを根本的に理解することによって得られます。

    分解能と精度のコンセプトはまったく異なるにもかかわらず、この 2 つの用語は多くの場合、混同されています。

    このブログ・シリーズでは、今回は 2 つのコンセプトの違いを詳細に説明し、次回以降で、ADC の精度を低下させる要因について掘り下げていきます。

    ADC の分解能はデジタル出力値を 1 カウント変化させる入力信号値の最小変化と定義できます。理想的な ADC では、この伝達関数は分解能と等しいステップ幅を持つ階段の形をしています。しかし、16 ビット以上の高分解能のシステムでは、伝達関数の応答が理想的な応答から大きく逸脱するようになります。ADC や駆動回路によってもたらされるノイズが…

  • アナログ回路設計者のためのアナログトレーニング ( Analog Training ) 日本語資料

    オームの法則といった電子回路の基本的事項から書かれています。 これからアナログ(主にオペアンプやADコンバータ)の回路設計を始める方、
    すでに回路設計をしているが、改めて基礎を勉強されたい方、あるいは、実際の回路でのトラブルシューティングに役立てたい方は是非ご活用ください。

    ■オペアンプ編

     ・e2e.ti.com/.../_AA30DA30A230F330D7302D005D306E30_1_2D00_.pdf

     ・e2e.ti.com/.../_AA30DA30A230F330D7302D005D306E30_2_2D00_.pdf

     ・オペアンプの動作原理:e2e.ti.com/.../SigChain01-OPAmp_5F00_Theory_5F00_V22.pdf

     ・TINA- TIによるオペアンプ動作の確認:e2e.ti.com/.../SigChain02-Tina_5F00_TI_5F00_Basic_5F00_V21…

  • D/Aコンバータの精度を改善するためのトリミング

    ラフール・プラカシュ(Rahul Prakash)、クナル・ガンディー(Kunal Gandhi)/Texas Instruments

    より多くの産業用システムが、より高い精度を必要としています。これまで、高精度のシグナル・チェーン部品の開発を促進してきたのは主としてテスト/計測機器でしたが、現在、この傾向はファクトリ・オートメーション、光ネットワーキングや医療用機器まで広がっています。ATE(自動テスト装置)、DAQ(データ収集)や高性能オシロスコープ製品は、最も高精度のシグナル・チェーンが必要です。

    高精度D/Aコンバータは、このようなシグナル・チェーンに必須の部品であり、高精度信号に最も大きな影響を与える構成要素でもあります。通常、高精度D/Aコンバータは、ゲインとオフセットの微調整や、その他の非直線性を最小にするために使います。したがって高精度D/Aコンバータは信号の較正を行うことで、信号の精度を向上することになります。本稿では…

  • TINA- TI によるオペアンプ回路設計入門(第12回) - 入力バイアス電流

    このブログはアナログシグナルチェーンの基本素子とも言うべきオペアンプの基本理論と応用回路技術の習得を目的とします。本格的な電子回路シミュレーション・ツールである TINA- TI を自分の手で実際に動かすことで直感的な理解が得られるよう工夫しています。 今回は、実践編として入力バイアス電流を取り上げます。

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  • クラウド・コンピューティングに信頼性と高速性を提供するメモリ・スイッチ製品

    ローカル・コンピュータのハードディスクの代わりに、データとプログラムをインターネット上に格納するクラウド・コンピューティングがますます普及しつつあります。クラウド・コンピューティングへの移行については、可動性、アジリティ(俊敏性)、セキュリティ、コストや性能など、ほんの少数の重要な利点だけが認識されています。このトレンドの中心にあるのは、サーバと企業向けシステムです。需要が増加するにつれて、企業向けサーバ製品内で処理速度、データ完全性やデータ持続性を向上する新しいテクノロジが必要になってきました。DDR(ダブル・データレート)メモリ・スイッチ製品を使うことで、図1や図2に示すように、これらの複雑なシステムの設計に、コスト効率に優れた新しい手法を取り入れることができます。

    1: NVDIMM アプリケーションでのメモリ・スイッチの使用例

    NVDIMM(不揮発デュアルインライン・メモリ・モジュール) は、予期しない停電、システム…

  • スマート・メーター用電源を設計する上での最大の問題を解決

    スマート・メーターは、何十年も前に開発されたテクノロジを搭載した既存のエネルギー計量用メーターの代替となる次世代メーターです。スマート・メーターは、安全な接続ネットワークを使い、エネルギー使用量のデータを自動的にかつワイヤレスで電気、ガス、水道などのエネルギー供給各社に送信します。このことで、顧客が使用エネルギーの料金概算書を受け取ることや、検針員が顧客の家に入って検針する必要がなくなります。

    スマート・メーターは、従来のIR(赤外線)やIrDA(Inftra-red Data Association)よりも進歩した通信インターフェイスを使うことから、より大容量のメモリや、より強力なマイコンが必要になります。これらの特長によって、消費電力が増加し、容量降下型電源ではなく、スイッチング・モード電源を使う必要があります。単相エネルギー・メーターは、最小で100VACから、最大500VACでの動作を求められます。三相エネルギー・メーターは…

  • クルマの回路設計をもう一段レベル・アップする方法

    温度や圧力、レーダー、カメラ、超音波…これらは最新の自動車に使われるセンサの一例にすぎません。クルマには、他にもオーディオやビデオ、計器、コントロール・ユニットのような複雑なシステムが搭載されています。毎年、クルマにはより多くのシステムが追加され、それらの多くに正常な通信動作が求められます。そして、同じ電圧領域でない場合には、電圧トランスレータ/レベル・シフタが必要となります。

    アナログ・ロジックの世界では、同じ電圧領域を使っていないことで、異なる最大電圧に変換されることがあります。異なるロジック電圧でシステムを通信・動作させる方法はいくつもあります。しかし、それらの多くが方向をコントロールするのに余分のビットを必要とする場合や、一つの方向でしか動作しない場合があります。『LSF0108-Q1』は、方向ピンを必要とせずにさまざまな電圧で動作する自動車品質の双方向変換器(トランスレータ)です。この記事では、『LSF0108…

  • USB Type-C: 電子デバイスに新しい標準の採用が実現可能に

    次世代のユニバーサル・シリアル・バスUSB Type-Cの登場により、スマートフォン、ラップトップ、その他の電子デバイス用充電器やアクセサリを複数持ち歩くような日々は終わりを迎えるかもしれません。

    USBTYPE-Cすべての電子デバイスを1本のケーブルで充電することを想像してみてください。たとえば、次のミーティングに向けて運転している間にラップトップのバッテリを充電したり、ノートブックPCを同僚のラップトップに接続するだけでプレゼンテーションを共有したりする場面が考えられます。これらは、電子デバイスの標準になると期待されているUSB Type-Cで実現できることのほんの一部にすぎません。

    私たちはこの革新により世界を前進させるだけでなく、新しいテクノロジを採用するお客様の支援も推進していきます。

    「私たちは、私たちがTIの電子デバイスと共に生活するうえでの新しいパラダイムを創出しています。TIが市場に送り出すICを利用することで、ノートブックPC、ドック…

  • 調和のとれた精度:高性能と強化絶縁耐性を達成

    ほとんどの自動車工場では、重いものを持ち上げたり、新車の部品を組み立てたりする際、その作業の多くに自動ロボット技術が使われていることを目にされると思います。


    このような環境では、モータ、ロボットアーム、スイッチ、高電圧装置の全てが調和のとれたシンフォニーのよう動作しなければならないため、精度が最も重要となります。そこでは、誤差は許されず、電気的ノイズの多い環境では協調した動作を図ることは困難になります。しかし、当社は、不協和音の多い産業環境において、高精度なモータ制御のノイズを遮断し、形を整え、フィルタをかける方法を見つけました。

    当社の最新TI Designのリファレンス・デザイン「電流・電圧・温度保護機能を持つ強化絶縁耐性三相インバータ」(『TIDA-00366』)で実証されているたように、当社は設計者が強化絶縁耐性技術を使って、高精度なシステムを作ることを可能にします。

    この設計をコーディネートしている当社のマチス・テイエンツァー…

  • HDMI 2.0:長い配線、コネクタ、およびケーブルできれいな信号を生成する方法

    伝送媒体を通して流れる信号は、ノイズ、歪み、および信号損失の影響を受けます。通常、低いビット・レートではシグナル・インテグリティ(完全性)やフィデリティ(忠実度)を保つことができ、長距離の伝送が可能ですが、DisplayPortやHDMI®(高精細度マルチメディア・インターフェイス)を介した何ギガビット/秒もの高速信号の場合、信号がコネクタを結ぶ長い配線や長いケーブルを流れる際に、通常はシグナル・インテグリティが大きく低下します。このような長い配線により、受信端で信号強度が下がり、歪みまたはノイズの多い信号になったり、標準に準拠しない信号になったりする場合があります。

    リタイマリドライバをDisplayPortやHDMIインターフェイスに使うことによって、ビデオ・システムは、信号品質が改善され、長い配線やケーブル上のシグナル・インテグリティを保つことができるようになります。このことは、信号がケーブルや配線に沿って伝わる距離を長く延ばすことによって…

  • TINA-TI によるオペアンプ回路設計入門(第11回) - 入力オフセット電圧

    このブログはアナログシグナルチェーンの基本素子とも言うべきオペアンプの基本理論と応用回路技術の習得を目的とします。本格的な電子回路シミュレーション・ツールである TINA-TI を自分の手で実際に動かすことで直感的な理解が得られるよう工夫しています。 今回は、実践編として入力オフセット電圧を取り上げます。

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  • Isolation Glossary(絶縁関連用語)

    1.       Isolation Glossary(絶縁関連用語)

    Primary Circuit一次側回路; 電力を受けるために、外部電源に直接接続されている回路。

    Secondary Circuit二次側回路; 一次側回路に直結していない回路で、トランス、コンバータや同等の絶縁デバイスから電源供給される回路、または電池から電力の供給を受ける回路。

    Creepage 沿面距離; 2つの導体部分を結ぶ、デバイスの絶縁面に沿った最短距離のこと。通常、パッケージの外周が沿面距離となります。

    Clearance 空間距離; 2つの導体間の、空間中での最短距離。

    Isolation Capacitance (CIO) 絶縁容量; 絶縁バリアの一次側端子全てを接続したものと、二次側全ての端子を接続して構成した二端子デバイスで、絶縁された端子間の静電容量。

    Isolation Resistance (RIO) 絶縁抵抗; 絶縁バリアの一次側端子全てを接続したものと…

  • 4-20mAカレントループ・トランスミッタ製品の基礎

    なぜ4-20mAカレントループが使われ続けるのか?

    産業用制御システムにおいて、4-20mAカレントループ・トランスミッタ製品は、使用、設置および保守が容易なことからコントロールセンターとフィールドに設置されたセンサ/アクチュエータ間のデータ伝送の最も一般的な通信方式の1つとして、今でも使用されています。

    4-20mAカレントループ・トランスミッタ製品の歴史は、初期の産業用オートメーション・サイトでアクチュエータの制御のために圧搾空気信号を使い、比例制御を行ったことから始まりました[1]。代表的な圧力レベルは3PSI~15PSIであり、3PSIはゼロスケールを、15PSIはフルスケールの入出力を表しました。圧搾空気のラインが故障した場合、圧力は0PSIまで低下し、対応が必要なフォールト(故障)状態であることを表しました。電子技術が主流になると、圧搾空気ラインは、アンプ、トランジスタ、およびその他のディスクリート電子部品で構成された4…

  • 強化絶縁: 二重絶縁を超える性能の単一絶縁

    高電圧に曝されるアプリケーションを扱う産業用システムの設計者は、最終兵器に対して適切な絶縁機能を確保し、システム・レベルで複数のIEC規格に適合させることが必要です。これらの安全規格、可変速ドライブが対象のIEC 61800-5-1等は、その機器が寿命となるまでの期間にわたって印加される一定の高電圧、偶発的な過電圧過渡波形や究極の高電圧ピーク・サージに対する絶縁性について、どのように確保すべきかを規定しています。強化絶縁は、産業用オートメーション、モーター・ドライブ、ヒューマン・マシン・インターフェイスや医療用エレクトロニクスなどのアプリケーションで、危険な高電圧に対する究極の保護機能を提供します。強化絶縁は、1つのデバイスで、お客様のシステムに2倍の絶縁保護性能を提供する機能として考えることができます。次に、単一絶縁による二重絶縁を超える絶縁性能を提供する方法を説明します。

    人体と危険な電圧源との間の絶縁に関する安全規格は、メインとなる…

  • 誘導性センシング: スイッチ・アプリケーションの簡略化

    Other Parts Discussed in Post: LDC0851

    移動する物体の存在を検出するスイッチング/ラッチ・アプリケーションは、設計が複雑になったり、信頼性の面で問題が起きる可能性があります。具体的な用途としては、ドアの開閉の際の不正検出や、センサの遮断や故障の発生を招く塵埃や油に常にさらされるギアの回転速度測定などがあります。

     スイッチング・アプリケーションに使用される技術によっては、さらに次のような課題が発生します。

    •  磁石や磁化材質などの付加的な部品の要件により、スイッチング・スレッショルドの精度が低下する問題が発生します。精度が低下する原因の 1 つが個々の部品のばらつきで、製造時に多くの場合キャリブレーションが必要になります。

    • 温度変化と部品の経年劣化も、スイッチング・スレッショルドの精度と再現性に影響を及ぼします。

     TI の LDC0851 差動型誘導スイッチは、コイル径に対して 1% の精度で温度安定性の高いスレッショルドを実現しており…

  • ESDや過渡現象からCANバス・トランシーバを守る方法

    Other Parts Discussed in Post: PROFIBUS, TCAN1051

    CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)やRS-485、RS-422、RS-232、およびProfibusのような産業用ネットワークは、それらのアプリケーションにおいて厳しいシステム・レベルの過渡電流(作業中の静電気放電(ESD)や誘導負荷の遮断、リレーの接触バウンスおよび/または落雷などに起因)に耐えられなければなりません。このような条件を満たすように設計するには、要求される基準についての適切なツールや知識がなければ難しくなります。ここでは、IEC(国際電気標準会議)61000-4-2 ESD規格、IEC 61000-4-2 ESD試験設定およびCANトランシーバの保護を支援するトランジェント電圧サプレッサ(TVS)ダイオード回路について述べます。

    IEC 61000-4-2 ESDイミュニティ試験は、帯電したオペレータがエンド…

  • TINA-TI によるオペアンプ回路設計入門(第10回) - 時間領域解析

    このブログはアナログシグナルチェーンの基本素子とも言うべきオペアンプの基本理論と応用回路技術の習得を目的とします。本格的な電子回路シミュレーション・ツールである TINA-TI を自分の手で実際に動かすことで直感的な理解が得られるよう工夫しています。 今回は、線形回路、トランジスタ回路、オペアンプ回路のAC解析を取り上げます。

    e2e.ti.com/.../TINA_2D00_TI_5F00_OPA_5F00_10_5F00_20160415.pdf← クリックしてダウンロードして下さい

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