• 完全統合型の信号・電源アイソレータを用いた低放射の実現

    Anand Reghunathan , Koteshwar Rao & Anant Kamath -2017年3月22日

    絶縁は、システムの2つの部分の間で信号・電力の伝達を許しながら、直流(DC)と不要な交流(AC)を阻止します。絶縁は、作業者や低電圧回路を高電圧から保護するほか、ノイズ耐性の向上、通信サブシステム間のグランド電位差の処理のため、ファクトリー・オートメーション、グリッド・インフラストラクチャなど広範なアプリケーションで使用されています。

    ほとんどの場合には、信号の絶縁とともに、絶縁型の電源が必要になります。このような電源は、フライバック、Fly-Buck、プッシュプルDC/DCコンバータを使用して絶縁トランスを駆動した後、2次側での整流によって作ることができます。しかし、現在では信号と電源両方の絶縁をワンチップ内に集約したコンパクトで効率の良い完全統合型ソリューションが提供されています。そのようなデバイスの概念ブ…

  • TINA- TI によるオペアンプ回路設計入門(第13回) - 入力/出力制限、レール・ツー・レール・オペアンプ

    このブログはアナログシグナルチェーンの基本素子とも言うべきオペアンプの基本理論と応用回路技術の習得を目的とします。本格的な電子回路シミュレーション・ツールである TINA-TI を自分の手で実際に動かすことで直感的な理解が得られるよう工夫しています。 今回は実践編として入出力制限とレール・ツー・レール・オペアンプを取り上げます。

    e2e.ti.com/.../TINA_2D00_TI_5F00_OPA_5F00_13_5F00_20170619.pdf← クリックしてダウンロードして下さい...

  • PGA 460-Q1: PGA 460-Q1 小型フォーム・ファクタ超音波モジュールの回路図とプリント基板パターン

    PGA 460-Q1 SFF小型フォーム・ファクタ)超音波モジュールの回路図とプリント基板パターン

    PGA 460Q1SFF は、PGA 460-Q1超音波センサ・シグナル・コンディショナと必要な周辺部品の片面プリント基板への実装を例示する、小型フォーム・ファクタのソリューションです。この小型フォーム・ファクタ・ソリューションには、トランス駆動とハーフブリッジ駆動という二種類の基板モジュールがあります。これらは両方とも、モノスタティック・モードとバイスタティック・モードの動作をサポートしています。モノスティック・モードでは1個のトランスデューサを使って超音波の発射とエコーの受信を行います。バイスタティック・モードでは、送信専用のトランスデューサから超音波を発射し、受信専用のトランスデューサで反射してきたエコーを受信します。

      

    PGA 460Q1SFF-XF

    PGA 460Q1SFF-HB

    Note:…

  • ゼロ・ドリフト、ゼロ・クロスオーバーからの解放により、システム・エラーを削減

    位置センサ、データ取得システム、抵抗温度検出器(RTD)のような応用例では、高精度な設計が極めて重要です。高精度ICを用いて設計することで、多くの場合、シグナル・チェーンの複雑さを軽減し、外部部品の数を減らし、基板面積とBOM(部品構成表)コストを最小限に抑えることができます。一つのデバイスで誤りが生じれば、それが他のデバイスに伝搬し、予期せぬ好ましくない結果を引き起こす可能性があります。特にDAコンバータ(デジタル-アナログ変換回路、DAC)の出力で用いられるバッファー向けオペアンプの場合、正確な出力を得るために高精度なDACとオペアンプを使用することが不可欠です。

    従来のレール・トゥ・レールCMOSアンプ・アーキテクチャには、図1に示されるようにPMOS(青)とNMOS(赤)という2つの異なる一対のトランジスタが含まれます。これらの2つのトランジスタ・ペアにより、コモンモード入力電圧範囲全般に対応しています。しかし、一方のトランジスタから他方のトランジスタに引き継がれる時…

  • 絶縁バリアを超えて電力供給およびデータ送信を可能にする新しい統合デバイス

    夏の暑さを乗り切るためにサーモスタットを調整することは、エアコンのコンプレッサを駆動させたり、家の中を冷やして、より快適にするモータを駆動させたりする多くの高電圧回路の長期駆動を可能にします。

    これらの駆動・制御回路に使えるスペースは狭く、騒音や振動にさらされ、屋内での使用よりも多くの汚染にさらされます。設計者は、その限られたスペースでは、サーモスタットから人を守りながら、高電圧のモータに対する絶縁バリアを超えた信号発信を安全に制御するための電力とデータの両方を確保する方法を工夫しなければなりません。

    「絶縁バリアは、工業と家庭のオートメーションが急成長し、世界中の高効率・高電圧ドライブとアクチュエータを駆動する製品と、人々が安全にやり取りできるようにするためにますます欠かせなくなりました。絶縁バリア(アイソレータ)は、高電圧回路と低電圧回路をつなぐことによって、マシン間でお互いを壊すことなく通信できるようになります」とTIの絶縁製品担当マネージャのカナン…

  • 産業用システム設計向け電源内蔵の強化絶縁アイソレータ

    ファクトリ・オートメーションやグリッド・インフラストラクチャ向け機器をはじめとした産業用アプリケーションへの需要が高まるにつれて、システムへの機能追加のニーズも増加しています。これによって、電源管理システムには、装置の温度を上昇させずに多様な回路に電源を供給するという、より厳しい要件を課されるようになりました。

     過去のブログ記事で、システムの低電圧側と高電圧側の間でのアイソレータ製品の使用について説明しました。データ・アイソレータ製品を使うことで、信号絶縁機能を簡単に実現できますが、それだけでは十分ではなく、電源の絶縁も必要です。いくつかの例では、2種類の絶縁型電源を使って、アイソレータの1次側と2次側に電源を直接供給しています。しかし、その他のアプリケーション例では、2次側用の電源を利用できないこともあります。このような例では、絶縁障壁越しに1次側から2次側に絶縁電源を供給する必要があります。

     図1 に、ディスクリート部品を使った絶縁型電源ソリューションの例を示します…

  • USB充電器をType-AからType-Cへアップグレードする際の要件

    USB充電器はますます普及しており、汎用品になりつつあるようです。USBポートはコンピュータにしか付いていなかった頃から、壁などのコンセントやクルマのパネル、航空機の座席などで利用されるようになっています。

    従来のUSB Type-A充電器は、一つの電圧しか扱えませんでした。これでは、簡単な高位設計にしか役に立ちません。図1に簡単な回路図を示します。RFBL とRFBUで構成された抵抗分割回路は、閉ループで安定化した出力電圧をVBUSに印加します。この回路構成では、左のフライバック・コントローラが安全のため出力電流を制限します。

    1 Type-A型コンセント向けの従来のUSB充電器の回路図

    USB Type-C™コネクタ上のUSBパワー・デリバリ(PD)はより大きな電力で充電することができますので、USB充電のエコシステムを一層広げることになります。しかし、USB PDとUSB Type-Cは新しい要件なので、図1の回路では十分ではありません…

  • デルタ・シグマ変調器を使用した絶縁高電圧測定

    モーター駆動やパワー・インバータなど、多くのアプリケーションでは電流と電圧の絶縁測定が必要になります。TIの絶縁型デルタ・シグマ変調器は、電流検出向けに最適化されていますが、電圧測定でも高い性能を提供します。

    こうしたアプリケーションでは、抵抗分割器の選択時に忘れてはならない重要な点があります。

    例えば、パワー・インバータへの入力電圧のモニタが必要な場合を想定してみます。インバータへの最大入力電圧が390VACでリニア入力範囲が±250mVのデルタ・シグマ変調器(TIのAMC 1304AMC 1305など)を使用するケースを想定します。

    こうした電圧センシングの実装を検討する際に最初に思い浮かぶのが、図1に示すような回路です。

     図1:絶縁電圧モニタリングのための最初のラフなソリューション

    図1のRaとRbで構成される抵抗分割器に関しては式1の関係が成立します。

     式1

    ここで注意しなければならないのは、デルタ・シグマ変調器のリニア入力範囲を有効に利用するために…

  • 16ビットD/Aコンバータを使って、18ビット D/Aコンバータの 伝達関数をコスト効率良く実現する手法

    近年、多数の高分解能の高精度D/Aコンバータ製品が、産業用テスト・計測機器に採用されるようになりました。設計者は総システム・コストを削減するため、しばしば、低分解能を余儀なくされることがあります。本稿では、まず1個の16ビットD/Aコンバータと2個のオペアンプを使って18ビットD/Aコンバータを構成する手法について解説します。その後、18ビット精度の出力が得られる2種類の回路トポロジを解析します。その一つは1チャネルの16ビットD/Aコンバータを、もう一つは4チャネルの16ビットD/Aコンバータを使います。最後に、両方のトポロジの一般的な動作理論について検証します。最後に、A/Dコンバータを統合したマイコンを活用することで、市場に供給されている最も高精度の18ビットD/Aコンバータの半分の価格で、低いDNL(微分非直線性)を可能にするとともに、伝達関数全体で単一増加性を保証するアルゴリズムについて説明します。

    コンセプト

    このデザインに関するハイレベルなアイディアは…

  • SAR ADCの応答時間:インターフェイス・トポロジによる違い(Part 3)

    このシリーズのPart 2では、サンプルSの変換結果を、変換完了後でかつ次の変換の開始前にホスト・コントローラに伝送するシリアル・インターフェイスについて解説しました。また、このタイプのインターフェイスでは、低速クロックを使用した場合、アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)のスループットと応答時間が遅くなることも指摘しました。

    インターフェイス・タイプ3ADCが次のサンプル変換を行う時にデータ・ビットを伝送

    このタイプのADCでは、サンプルSの変換結果は、ADCがサンプルS+1の変換を行っている時にホスト・コントローラに伝送されます。

    図1はこのタイプのシリアル・インターフェイスを示します。(**クリックすると画像が拡大表示されます。)

     1:タイプ3のシリアル・インターフェイス

    • tDTX = tCONV = n*tCLK
    • ŸtTHROUGHPUT = tCONV + tACQ(n*tCLK < tCONV 、つまり高速クロックの場合…
  • SAR ADCの応答時間:インターフェイス・トポロジによる違い(Part 2)

    前稿では、各データ・ビットを分解し、伝送するシンプルなシリアル・インターフェイスについて解説しました。また、このタイプのインターフェイスの使用は通常、低分解能または低速のADCに限定されることも述べました。

    最新の高分解能(12ビット超)の逐次比較型(SAR)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)は、ほとんどの場合、冗長/エラー補正技術の採用により、特に高スループット・レートでのADCの性能を向上しています。こうしたADCでは、最終的な変換結果は、すべての変換処理の完了後にのみ得られます。

    インターフェイス・タイプ2:変換処理が完了次第、データ・ビットを伝送

    このタイプのADCは、サンプルSの変換処理が完了すると変換結果をホスト・コントローラに伝送し、その間に次のサンプルS+1を取りこみます。ホスト・コントローラは、サンプルSの変換結果を受けとってから初めて、サンプルS+1に対する変換開始(SOC)信号を発します。

    ADCとホスト…

  • SAR ADCの応答時間:インターフェイス・トポロジによる違い(Part 1)

    本稿では、インターフェイス・トポロジが逐次比較型(SAR)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)のスループットと応答時間に与える影響について検討します。

    SAR ADCは一般的にアクイジションと変換の2つの動作フェーズで構成されており、次のように機能します。

    • Ÿアクイジション・フェーズでは、サンプル・ホールド・スイッチが閉じており、SAR ADCは外部アナログ入力をサンプリング・コンデンサに取り込みます。その後、ホスト・コントローラが変換開始(SOC)信号を発して、アクイジション・フェーズを終了させ、アナログ/デジタル変換の処理を開始します。
    • Ÿ変換フェーズでは、SAR ADCはサンプリングした、つまり取り込んだアナログ入力を、二分探索アルゴリズムを用いて等価のデジタル・コードに変換します。デジタル・データ出力はADCとホスト・コントローラの間でデジタル・インターフェイスを使用し、ホスト・コントローラに伝送されます。

    各用語の定義は次の通りです…

  • SAR ADCの評価にコヒーレント・サンプリングとFFTウィンドウを活用(Part 1)

    アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)を評価する際に、多くの設計者がADCのダイナミック特性を解析するために高速フーリエ変換(FFT)法を使用しています。このダイナミック特性テスト手法は、ADCの入力側に純シングルトーン正弦波信号を加え、ADCデータの周波数領域解析を行い、スペクトルに含まれるノイズと歪み成分を数量化します。ADCの特性を調べる際にコヒーレント・サンプリングを用いると、FFTのスペクトル成分を正確に分解することができます。コヒーレント・サンプリング基準に対応できないアプリケーションの場合、サンプリングしたデータにウィンドウ加重関数を適用してスペクトル漏れを最小化します。

    本稿では、ADCのFFT解析に関する2つの重要なコンセプト、すなわちADC評価の際のコヒーレント・サンプリングの基礎と非コヒーレント・サンプリングの影響を考察します。さらに、今後のブログで、コヒーレント・サンプリング、ウィンドウ・サンプリング、最適なウィンドウ選択のための基準について取り上げます…

  • デルタ・シグマ変調器とデジタル・フィルタ使用時のシステム・トレードオフ

    デルタ・シグマ変調器の性能について分析する際、メーカーは一般に変調器をローパス・デジタル・フィルタと組み合わせることを前提にしています。その際、選択されるフィルタのタイプは多くの場合、3次sincフィルタです。

    図1に代表的なsinc 3フィルタの周波数応答を示します。

     図1:20MHz、OSR=256のsinc 3フィルタの周波数応答

    sincフィルタは、CIC(カスケード積分コム)フィルタと呼ばれるデジタル・フィルタ・ファミリに属します。CICフィルタはハードウェア構造の効率が非常に高く、他のフィルタ・アーキテクチャと比較しデジタル・ゲート数が相対的に低い形で構築できることから、多くの場合、デルタ・シグマ変調器との組み合わせにより使用されます。図1はsincフィルタ使用時の主なトレードオフ関係を示しています。フィルタ構造はシンプルで実装コストが低くなりますが、こうしたフィルタの遷移帯域はむしろ広くなります。

    モーター・コントローラとパワー…

  • デルタ・シグマADCの基礎:デルタ・シグマ・ブロックについて

    デルタ・シグマ(ΔΣ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)に関するブログ・シリーズの最初の2回では、デルタ・シグマADCで使用される2つの基本ビルディング・ブロック、すなわち変調器とデジタル・フィルタについて解説しました。しかし、デルタ・シグマADCには、それ以外にも多くのICが使用されています。機能ブロックと並んで、その個々のブロックにはさまざまなタイプが使用されていることから、多数のデルタ・シグマADCがアプリケーションに応じてカスタマイズされています。

    本稿ではこうした機能の多くについて簡単に取り上げるとともに、個々のアプリケーションでどのような役割を果たしているかを説明します。各タイプのデルタ・シグマADCを取り上げ、そのブロック図について解説します。まず、部品点数の少ない回路図を見ていきます。

    ADS 1252

    図1はADS 1252デルタ・シグマADCのブロック図です。変調器とデジタル・フィルタが必須の部品です…

  • デルタ・シグマADCの基礎:デジタル・フィルタの機能

    デルタ・シグマ・アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)を使用することにより、設計中のシステムで最高の分解能を実現できるかもしれません。しかし、このアーキテクチャのメリットを最大化するには、測定分解能の向上を可能にするためにADCのデルタ・シグマ変調器とデジタル・フィルタをどのように組み合わせればよいかを理解する必要があります。私が執筆した「デルタ・シグマADCの基礎」シリーズは、測定分解能を向上するために変調器とデジタル・フィルタを組み合わせる方法について解説しています。

    Planet Analogでぜひ全文をご覧ください。

     上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

    http://e2e.ti.com/blogs_/b/precisionhub/archive/2015/02/10/delta-sigma-adc-basics-how-the-digital-filter-works

    *ご質問は E2E 日本語コミュ…

  • デルタ・シグマADCの基礎:デルタ・シグマ変調器について

    デルタ・シグマ・アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)はデルタ・シグマ変調器とデジタル・フィルタで構成されます。変調器はアナログ入力をデジタル・ビット・ストリームに変換し、一方、デジタル・フィルタはビット・ストリームを、アナログ入力の大きさを表すデータ・ワードに変換します。

    まず、変調器の働きを見ていきます。図1に示す、1次デルタ・シグマ変調器トポロジの非常に基礎的な分析から開始します。

     図1:デルタ・シグマ変調器内部のブロック図

    変調器は入力のサンプリング間隔を決定する変調器クロックから動作を開始します。入力サンプルと1ビットDAC間の差を積分することにより、変調ループが始まります。

    コンパレータは積分器の値に基づき、次の変調器出力を決定します。1ビットDACはコンパレータの出力状態に応じて、ADCの正負基準電圧に等しい電圧を生成します。変調器出力が1の場合、基準電圧は入力から差し引かれます。変調器出力が0の場合、基準電圧は入力電圧に加えられます…

  • SAR型A/Dコンバータの入力タイプによる性能比較 Part 2

    逐次比較(SAR)型A/Dコンバータの入力タイプ別の比較を続けます。これまでに、SAR A/DコンバータのSAR型A/Dコンバータの入力タイプの比較SAR型A/Dコンバータの入力タイプの性能比較 パート1 のブログ記事で説明をしました。このブログでは、SAR型A/Dコンバータ内のTHD(全高調波歪み)の原因と、入力タイプによる違いについて説明します。

    THDの影響

    まず、高調波歪みがどのように発生するかを考えます。コンバータは、基本的には非直線システムです。システムが完全に直線であれば、入力xに対して、mx+cの出力が得られるはずです。しかしサンプリング・コンデンサと変換コンデンサ、量子化の非直線動作のため、信号xが非直線システムで処理されることで、A/Dコンバータの出力にはDCと高次の誤差項(x2、 x3、 その他)が発生します。

    出力を周波数ドメインで観測したとき、各高次項 (x2、x3 その他) は不要信号(スプリアス…

  • SAR型A/Dコンバータの入力タイプによる性能比較 Part 1

    前のブログ記事SAR型A/Dコンバータの入力タイプの比較 では、SAR(逐次比較)型 A/Dコンバータ製品の、シングルエンド、疑似差動、完全差動の各入力タイプの違いについて説明しました。

    SAR型A/Dコンバータを選択する場合に重要な仕様には分解能、チャネル数、サンプリングレート、電源電圧範囲、消費電力、デジタル・インターフェイスやクロック速度などがあります。SNR(信号-雑音比)やTHD(全高調波歪み)をはじめとしたノイズやACパラメータについてはどうでしょう? これらのパラメータはシステムの総合的な性能を左右することから、当然、SAR型コンバータの入力タイプの選択にも影響します。

     

    各入力タイプへのノイズの影響

    シングルエンド入力: このSAR型コンバータは、信号源との接続に、1本の基板パターンやケーブルと、1個の入力ドライバだけを使います。このA/Dコンバータが、コンバータ自身のグラウンドを基準として入力信号を計測していることは…

  • SAR型A/Dコンバータの入力タイプの比較

    設計中のアプリケーションで、最高の性能を発揮するSAR(逐次比較型)A/Dコンバータの選択に、入力信号がどのように影響するかをご存じですか。

    「入力」という言葉を聞くと、私たちの頭の中には周波数、振幅、サイン波、ノコギリ鋸波その他の言葉が浮かびます。これらのそれぞれが、信号コンディショニングを最適化しようとする場合に、関連した問題を持っています。しかし、事前にあまり考慮されないのが、SAR型A/Dコンバータ の入力タイプです。このブログ記事では、シングルエンド、疑似差動、それに完全差動という3種類のSAR入力と、それぞれのアプリケーションでの使用について検討します。また、後続のブログ記事では性能の差や、最適な入力性能を得るために憶えておくべき、いくつかの重要な基本的注意事項についても説明します。

     

    シングルエンド入力SARA/Dコンバータ

    3種類の入力タイプの中で、最も簡素なのがシングルエンド入力であり、A/Dコンバータには1本の入力しかありません…

  • SAR型A/Dコンバータの駆動にはアンプが必要?

    一般に、SAR(逐次比較)型A/Dコンバータで高精度の計測を行うためには、アナログ入力にドライバが必要ですが、低いスループットで、低い分解能の場合にはドライバが不要な場合もあります。SAR型A/Dコンバータのサンプリング動作とアナログ入力構造を検討して、ドライバの必要性について考えてみます。

    SAR型A/Dコンバータのアナログ入力回路はサンプリング・スイッチ、抵抗Rsとサンプリング・コンデンサCsで構成されます。図1に、SAR型A/Dコンバータのアナログ入力回路を示します。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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    サンプリング・スイッチは、入力信号を取り入れるためにアクイジションタイムtACQ の期間にオン(導通)となり、変換動作中にはオフ(切断)になります。サンプリング動作中には、アナログ入力信号源からサンプリング・コンデンサへ電荷が移動し、サンプリング・コンデンサが入力信号の電位まで充電されます。Nビット分解能のA/Dコンバータでは、サンプリング…

  • 高精度のデータ・アクイジションとは?すべてが相対的です

    「利口な人は問題を解決する、賢い人は問題を回避する」アルバート・アインシュタイン

    アルバート・アインシュタインは恐らくアナログ設計が好きだったのではないかと思います。アナログ設計には、常に相対的な要素が含まれています。例えば、データ・アクイジション・システムの精度は、データ・コンバータのリファレンス電圧を基準とした、相対的なものです。

    設計者の知恵と洞察力次第で、必要なトレードオフを評価し、基板レベルの設計で最適な性能を実現できます。設計者は、電圧リファレンス回路の設計に隠れた落とし穴を常に考慮しなければなりません。さもなければ、16 ビットのデータ・アクイジション・システムが、しばしば、12 ビット精度で動作することがあります。

    データ・アクイジション・システムの A/D コンバータにリファレンスが内蔵されていない場合、外部の電圧リファレンスが必要になります。基板レベルやシステム・レベルの設計者にとって残念なことに、これがしばしば…

  • A/D コンバータ入力駆動の際に最も役立つ経験則

    技術者は多くの経験則を駆使して、設計プロセスの簡素化を試みます。私の最も好きな経験則は、A/D コンバータの入力を低インピーダンスの信号源で駆動することです。その理由は、高精度データ・アクイジション・ブロックに多くの利点を提供するからです。

    本稿では A/D コンバータの入力範囲に合わせるために、高電圧の信号源のレベル変換が必要な、代表的なアプリケーションを検討します。図 1 の簡単な分圧回路は、±5V の信号を 0.5V に変換することで、レベル変換の問題を解決します。この分圧回路の等価インピーダンス Req は R1 と R2 の並列抵抗によって得られます。

    この有限の信号源インピーダンスは、データ・アクイジション・システムに、どのような影響を与えるでしょうか。

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    高い信号源インピーダンスは、データ・アクイジション動作中に、直線性誤差と非直線性誤差の両方を発生します。SNR や THD の悪化を招く大きな誤差要因には…

  • On Board with Bonnie: A/Dコンバータのノイズの徹底的な検討

    A/D コンバータのノイズについて、アナログの観点から検討したいと思います。通常、こうしたノイズはデジタルの観点から説明されるため、読者の方々は、アナログの観点から見ることについて違和感があると思います。私はお詫びしなければならないかもしれません。しかし、アナログの観点から検討すると、非常に明解な結果を得ることができます。

    図1の ADS 1220 などのデルタ-シグマ型A/Dコンバータは、データ・コンバータで発生するノイズについて詳細な情報を提供します。ここでノイズ en の単位は実効値マイクロボルト(μVrms)と、ピークツーピーク・マイクロボルト(µVp-p)です。

    1: ADS 1220 高精度A/Dコンバータを使った抵抗ブリッジ計測回路

    図 2 に示すように、オペアンプの場合と同様にノイズは入力換算値として表すことができます。オペアンプの場合、ノイズ en の単位はナノボルト/√Hz (nV/√Hz…

  • 熱ノイズを利点に変える方法

    アナログ設計では熱ノイズは常に寄生しますが、あらゆる手段を使っても回避する必要があります。入力フィルタ、プリント基板のレイアウトやグラウンド手法は、良い設計には重要ですが、アナログ・システムでは多少のジョンソン-ナイキスト熱ノイズや、フリッカ・ノイズは常に残留します。

    熱ノイズや、その他のノイズ源よりも深刻なノイズ源となるのが量子化ノイズです。量子化は信号をアナログからデジタルに変換する際に発生します。

    4 ビットのアナログ/デジタル・コンバータ でサイン波をデジタイズした結果発生する、量子化ノイズの様子を図 1 に示します。

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    測定する対象に定規を当てて長さを測る場合には、定規の目盛りを読み取ります。その時、その対象の長さが 2 つの目盛りの間の場合にはどうなるでしょうか。2 つの目盛りの間の長さをどうしても測らなければならないときには、実際の長さに近い方の目盛りを選ぶことになります。実際の長さと目盛りの違いを、一番近い目盛りを元に四捨五入して丸めることは…